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消えた「砂時計」

2009.11.05

 

 その店は、阪急苦楽園駅前にありました。

 お店の名前は「砂時計」。
 ご夫婦で営んでおられました。
 駅前の少し奥まった場所の地下にあったフランス料理のお店です。
 フランス料理といっても家庭的な洋食屋さんといった感じで、コース料理を頼んで3000円も出せば、お腹一杯食べられます。
 
 バブル期には、相当な賑わいを見せていたこのお店も、4・5年前に私達が行った時は、私達以外に誰もお客さんがいないか、いてもせいぜい1組くらいでした。

 「こんなに美味しくて、真面目で誠実なサービスをして、しかも、とびきり安いのに、何故お客さんが来ないのだろう。」

 私は「砂時計」に行く度に胸が痛くなっていました。
 「近くに引っ越したら頻繁に行こう。」と心に誓い、近くに転居して、しばらくして行ったのですが、「砂時計」は跡形もなくなく消えていました。

 誠実で良質なサービスを提供するお店が消える一方で、中身は大したことないのに派手なコマーシャルで流行っているお店をたくさん見かけます。
 
 自由競争が機能するためには、色々な条件を満たすことが必要です。

 実際には、ほとんどの分野で自由競争は機能しないと言っても過言ではないようです。
 特に、弁護士といった専門的な職業については、消費者がその技能を適正に評価するのは事実上不可能でしょう。
 弁護士の場合は、医師の場合とは異なり、一生に一度利用するかどうかですから、他との比較をする術がありません。
 仮に、2人の別の弁護士のところへ行って違うことを言われても、弁護士と同程度の法律的知識がなければ、どちらの言っていることが正しいかを判断することはできません。

 弁護士激増論が叫ばれる時「自由競争をさせれば、良い弁護士が残り、悪い弁護士が淘汰される」ということが言われますが、これは間違いです。
 他の世界を見るまでもなく、実際には逆の現象が起こるでしょう。
  
 「悪貨は良貨を駆逐する。」

 でも、そうなってからではもう遅いのです。


 
 

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