最新情報詳細 一覧へ

< 一覧へ

法科大学院の崩壊が始まる

2010.05.27

 

 姫路獨協大学法科大学院が平成23年度以降の学生募集を停止する方針を固めたことが報道されています。
 
 一般の方には興味がないと思いますが、司法改革により、新司法試験に合格するためには、4年大学を出た後、更に、法科大学院を卒業しなければならなくなりました。
 少子化により学生数が著しく減少していることから、大学は、法科大学院を作らなければ法学部自体の魅力がなくなり大学に学生が集まらないとの危機感から、競って法科大学院を作りました。
 そして、各大学は法科大学院をより魅力的なものにするために莫大な借金をして模擬法廷や法科大学院生用の学習室を作りました。法科大学院の建物を建てるだけでも莫大な費用を要します。そのため、大学は文部科学省に交付金のおねだりをせざるを得なくなります。法科大学院らが文部科学省に交付金を要求ばかりするくだりは、元法務副大臣の河井克之議員の著書「司法の崩壊」やブログ(http://www.election.ne.jp/10868/72527.html)その他あちこちに出てきます。
 その結果、平成20年度の法科大学院関連予算だけで213億円の税金が使われたそうです(上記ブログ参照)。
 これに各学生が支払っている学費や入学金を合わせると、公費私費合わせて年間莫大な費用が法科大学院の為に使われていることが分かります。

 横道に逸れますが、修習生の給費制を維持するに必要な費用は、年間司法試験合格者数2000人としても60億円です。給費制の問題は、司法試験合格者数を絞らなくても、法科大学院制度をさえ止めれば簡単に捻出できる費用なのです。

 また、借金漬けで文部科学省から多額の交付金を受けながら、大学がどうして自由闊達な教育ができるでしょうか。益々大学は文部科学省の言いなりになるだけです。
 
 5月22日付け週刊東洋経済では、法科大学院協会理事長の青山善充氏が「名誉ある撤退を真剣に考える時期だ」と仰っています。でも、ほぼ一両日にして法科大学院制度が決められ、存亡の危機をくぐり抜けるために各大学は我先にと法科大学院を作らされ借金まみれにさせられたのです。そして、法科大学院として簡単に認可され、否応なしにこのような状況に追い込まれたのに、今頃になって「法科大学院協会は74校すべてを守る護送船団ではない」(週刊東洋経済青山理事長の言葉)と今度は手のひらを返したように切り捨てられようとするのは大学側としては「あんまりだ」との思いなのではないでしょうか。

 青山理事長は「「年3000人」へ向けて着実に合格者を増やしていくことが志願者数の回復につながり、そのことが質の向上にもつながっていく」(週刊東洋経済)と言われますが、実際には逆の現象が起こります。すなわち、年3000人の合格者数になれば、益々就職難が加速し、弁護士の労働条件が悪化することから志願者数は激減し、質の低下は無視し得ないものになるでしょう。

 2000人合格者の現時点でさえ、司法試験合格者数が増え過ぎてしまい、東大や京大といった有名国立大学卒の弁護士でさえ就職先がなく学費や生活費のための借金苦にあえいでいます。法科大学院生や受験生には、既に、司法試験に合格して弁護士になっても就職先がなく、仮に就職先があっても薄給で劣悪な労働条件であることが浸透してきています。
 そのため、年々法科大学院の受験者数、適性試験の受験者数は激減しているのです。
 一体全体どこの誰が多額の借金を背負った上で生活できない職業を目指すでしょうか。
 
 姫路獨協大学の決断は、法科大学院崩壊のほんの序章に過ぎないと思います。

pagetop