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就職先が見つかったからといっても安心できない

2010.09.01

 

 今年は、500人から1000人近い就職先のない新人弁護士が誕生する可能性があることは先のブログで申し上げました。

 でも、就職先が見つかったからと言っても安心することはできません。
 外見上は、就職できているかに見えても給料のない「ノキ弁」(法律事務所の軒先だけを借りる弁護士)の場合もあるからです。

 「ノキ弁」には、いろいろなパターンがあるようです。
 例えば、事務所から事件を分けてもらい、弁護士報酬の1割とか2割を事務所から支払ってもらい、かつ、事務所所属の事務員に仕事をお願いしても良いパターン、事件を分けてはもらえるが、事務所の事務員に仕事をお願いできないパターン、或は、事務所から事件を分けてもらえず、事件についての指導もしてもらえないパターン、すなわち、本当に事務所の軒先だけを借りるパターンです。最後のパターンの場合、法律事務所の名前を使用させてもらえない場合もあるようです。
 事務員に仕事をお願いできない場合、封筒の宛名書きや銀行や郵便局に弁護士が自ら行うことになります。

 そして、これらノキ弁のいずれの場合において も、ノキ弁が事務所に経費の一部を支払うことも結構多いようです。事務員に仕事をお願いできず、かつ、月額数十万円の事務所経費を負担させられるような場合、外形的に見てノキ弁には何のメリットもありません。従って、思わず「そのような条件なら自分で安い事務所を借りた方がマシじゃないの?何故ノキ弁のままでいるの?」と思ってしまいますが、実際にこのような言葉を口に出すことはありません。
 なぜなら、自分で高い事務所敷金やパソコン・ファックスコピー機といった開業時に必要となる支出を捻出できるくらいなら、そのような悪い条件でノキ弁に固執しているはずはないからです。
 開業時には、通常500万円程度が必要だと言われています。
 このような自己開業資金のないノキ弁に対して「独立した方がいいんじゃない?」という言葉をかけることは、ノキ弁に対して追い討ちをかけて傷つけるだけの言葉だからです。

 他方、事務所経営者側の弁護士をむげに批判することもできません。
 なぜなら、外形的には搾取しているだけのように見える経営者側弁護士だって実は赤字経営でやむなく新人弁護士から経費を吸い上げざるを得ないだけかもしれないからです。

 このようにして、結局、ノキ弁は、いつまで経っても、生活が安定しません。
 弁護士には労働基準法の適用がないので、夜遅くまで残業代など支払われることもなく、ただただ働き蜂として働き続けます。

 「こんな日本に誰がした。」

 結果はもう出ています。

 責任追及をすべき段階に入りました。
 


 

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