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法曹人口政策に関する緊急提言

2011.05.17

 

 3月27日の日弁連理事会では、3つの決議が可決されました。

 「法曹養成の改善に関する緊急提言」と「民事司法改革推進の取組についての基本方針」と「法曹人口政策に関する緊急提言」の3つです。

 「法曹養成の改善に関する緊急提言」のことは、以前にこの「最新情報」で何度か触れましたが、今回は「法曹人口政策に関する緊急提言」について取り上げたいと思います。

 「法曹人口政策に関する緊急提言」は、これまで日弁連が年間の司法試験合格者数を2100人から2200人の「現状維持」すべきとの意見であったのを「相当数減員」と明確に減員の方向に舵を切ったことに大きな意義が認められます。

 この緊急提言で「就職難が生じること自体、当初予測されていた弁護士への法的需要が社会に現れていない証」と記載することにより、弁護士激増に見合う法的需要が存在しないことを日弁連自身が認めた点も評価できます。

 また、「2002年3月の閣議決定における「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」とした部分については、もはやその妥当性を欠いているとも評価できる。」として閣議決定を見直す必要がある点を日弁連が認めたことも評価できます。

 他方で、この緊急提言に司法試験合格者数についての明確な数字が入れられなかったこと、もともとの司法改革の方向性自体は誤りであったことを明確に謳えなかった点には大きな問題があります。

 司法試験合格者数について、「相当数減員」というのが、何名を意味するのかについて明確に規定しなければ、執行部のさじ加減でどのようにでも操作できます。極端に言えば、合格者数2000人でも、現在の合格者数から「減員」といえるのです。
 「そんな馬鹿げたことがあるわけがない」などとは、これまでの経緯を見ているかぎり、自信を持って言うことができないのです。

 この緊急提言には「もともとの司法改革の方向性は間違っていなかった。」という言い訳が文面にあふれています。しかし、司法改革によるひずみの内容や深刻さを直視すれば、「方向性は間違っていなかったが、そのスピードが急激過ぎただけ。」などといった生易しいものでなかったことは明白です。
 
 今年2月26日に兵庫県弁護士会で行われた法曹人口問題についての市民シンポでは、ついこの間まで、司法改革を強く進め、「司法改革は正しかった」との認識であった某国会議員が「これまで我々が進めてきた司法改革が間違っていたことを直視すべきである。」旨堂々と発言されました。

 日弁連(弁護士)がこの期に及んで「これまでの司法改革は間違っていなかった」との立場にこだわる理由として、自ら司法改革を進めた面子をつぶしたくないとの自己保身にこだわっている以外に私には理由が見つかりません。 
 
 『過ちて改めざる、これを過ちと謂(い)う。』

 国会議員の態度の方が品格ある人の道であると私は思います

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