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法科大学院と「泥船」

2012.05.29

 

 平成24年5月28日、明治学院大学が来年度の法科大学院の学生募集停止の決定を発表しました。

 NHKの報道によると「明治学院大学の法科大学院は、8年前に開設され」当初の「志願者は1329人」だったのが、今年度は59人と4%にまで減ったのだそうです。
 
 法科大学院が学生の募集を停止したのは、姫路獨協大学、大宮法科大学院に続いて全国で3校目です。今後もここ数年で続々と募集停止をする法科大学院が出てくるのは目に見えています。
 なぜなら、文部科学省が合格率の低い法科大学院に対して補助金の削減等と言った厳しい措置を執ることを既に公表しており、追い打ちをかけるように法科大学院志願者が激減しているからです。

 もともと法科大学院は、創設に際して新たな校舎や模擬法廷といったハコモノ建設、教授や講師の誘致や事務局等莫大な人件費等々大赤字の事業です。従って、仮に、定員が充足されたとしても、補助金が削減されれば、たちまち立ち行かなくなります。その上、どこの法科大学院も志願者が激減し、定員割れの法科大学院が急増しています。昨年6月の報道では、定員を満たした法科大学院は全国でも74校中たったの2割の15校にすぎませんでした。ナント残り約8割の59校が定員割れだったのです。しかも、年々定員割れの法科大学院は右肩上がりで増え続けています。
 
 明治学院大学の志願者が8年間で4%に減るなどというのは、異常事態に見えるかもしれませんが、決してそうではありません。 
 姫路獨協大学・大宮法科大学院・明治学院大学に続く予備軍はいくらでも存在します。

 企業に社員となるために法科大学院に入学する人は多くはありません。
 法曹、もっと言えば、弁護士になりたいからこそ高い学費と長い年月をかけて法科大学院を出るのです。

 ところが、弁護士になっても就職できない、仮に就職先が見つかっても何時追い出されるかわからない、独立開業しても赤字経営のリスクが高い、奨学金といった借金を返済する目途もたたないのですから、そんな職業を時間と労力とお金をかけて目指す人がどこの世界にいるというのでしょうか。

 ここ数年で募集を停止する法科大学院が後を絶たないであろうことは、論を待ちません。法科大学院は、放っておいても自然消滅するでしょう。

 このような事態を当初から予想していたからこそ、私たちは反対したのです。

 それなのに、「泥船」であることがわかっていたのに、我が国にこの法科大学院の制度を導入し、次々と犠牲者を増やした国(文科省・法務省や政治家)、弁護士会、そして大学の責任はきわめて重いと言えましょう。

 自分さえ被害者にならなければ、それで良いという人が多すぎます。
 
 そのような人たちに「人権」など語る資格はないと思います。
 

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