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「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」可決

2012.07.13

 

 昨日の日弁連理事会で「法科大学院制度の改善に関する具体的提言(以下「本提言」と言います。)」が審議され、反対11、棄権6、その他圧倒的多数で可決されました。本提言の内容は、日弁連のホームページに掲載されています( 
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120713.pdf

 本提言の「法科大学院制度は」「法曹を養成するための中核的な教育機関として創設された」との前書きからして、作成されたのが法科大学院制度礼賛の方々或いは法科大学院の実務家教員の方々であることが明らかです。
 
 本提言の内容に対する反論は、いくらでも書けるのですが、今日は本提言に対する反論は横に置いておくこととします。

 私が今回のブログで申し上げたいのは、本提言の記載内容からして、法科大学院制度がいかに破綻しているかがわかるということです。

 例えば、本提言は、前書きで「法科大学院制度の現状は、上記の理想とはなお遠い状況にある」と記載し、当初の目的と現実がいかに大きくかけ離れているかを認めています。

 また、同じく前書きに「法科大学院の乱立による司法試験合格率の低迷、教育の質の格差拡大の懸念は、」「代表的なもの」と記載しています。
 本提言は、法科大学院の教育の質に格差があり、教育の質に問題ある法科大学院が存在すること、そして、乱立したことにより質に問題が生じ、その結果、司法試験の合格率が低迷していることも認めています。

 そして、何より興味深いのは、合格率の低迷、教育の質の格差拡大といった法科大学院の問題が「代表的な」問題に過ぎないこと、すなわち、法科大学院制度が上記2点以外にも多くの問題を抱えていることを本提言が認めていることです。

  更に、前書きで「入学志願者の急激な減少という危機的な状況を迎えている」と法科大学院制度が危機的状況に立ち至っていることまで認めています。

 本提言を拝見していると法科大学院制度礼賛の方々の危機感がひしひしと伝わってきます。
 法科大学院制度礼賛の方々の目からしても、法科大学院制度が失敗していることが明らかなのです。

 
 本提言の提言の趣旨「1 法科大学院制度」の「(3)①(2頁目)」には「法律基本科目(とりわけ民法)の教育充実の観点から、年間履修単位数の上限について」「若干の緩和を図ること」と記載されています。
 法科大学院は、受験生の負担にならないよう履修単位数に上限が設けられ、上限を超えては単位を取れないシステムになっています。しかし、それでは、あまりにも授業時間が少なくて基本科目とった基本的な法律の基礎的学習レベルがきわめて危ういことから、履修単位数の上限を緩和しようと提言しているのです。しかも、実務家になって一番使う必要のある基礎中の基礎的法学である「民法」の基礎知識さえ習得できていないことを認めているのですから、法科大学院の教育にいかに問題があるかがわかります。

 続けて本提言は「1 法科大学院制度」の「(3)⑦(3頁目)」で「未修者が法曹になるための基礎力を適切に習得できるよう、カリキュラム、教育内容・方法等に関するさらなる改善を図るとともに、特に2年次への進級判定を一層厳格に行うこと」と提言しています。
 これは、裏を返せば、すなわち、未習者の基礎的学力に非常に問題があり、2年次への進級判定が甘く設定され、本来進級を認めてはいけないレベルの学生が進級しているとの現実があることを本提言が認めていることを意味します。

 このように、日弁連の弁護士の中でも法科大学院の制度や学生に日々接し、最も法科大学院制度を知る人たちが法科大学院制度が破綻していることを認め、その危機感から本提言を出しているのです。

 法科大学院制度の礼賛する人でも法科大学院制度の失敗を認めざるを得なくなるところまで来ているということですから、法科大学院制度は、既に10年も経たずしてもう『終わっている』のです。


 

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