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予備試験をどうしても制限したい理由

2014.11.11

 

 法科大学院関係者(マスコミを含む)が何故予備試験合格者数及び受験要件を制限したいかというと、それは法科大学院制度を死守したいからです。

 法科大学院入学者が激減し、予備試験受験者が増えているので、予備試験に学生を採られているという発想なのでしょう。

 しかし、それは幾重にも間違っています。

 まず、法科大学院中心主義的発想が間違っています。
 司法改革は、司法制度を良くするための制度改革であり、法科大学院制度のための改革ではありません。
 法科大学院ありきの発想で「予備試験を制限しなければ法科大学院がつぶれてしまう。」との主張は正当性を持ち得ないと思います。

 予備試験を制限したのでは、法曹を目指す給源の多様性は益々失われてしまいます。法科大学院に行けない人で法曹になりたい人及び法科大学院には行きたくないが法曹になりたい人が法曹になる芽を潰すことになるからです。

 司法改革で法科大学学院制度を導入する際に法科大学院制度導入についての議論はほとんど行われなかったのですが、後付的に法科大学院設立の必要性として言われたものの一つに、法曹の給源の多様性を広げるため(?!)というものがありました。
 しかし、実際には、法科大学院制度導入に伴い、法曹の給源の多様性は失われ、他学部出身者、社会人経験者の法科大学院入学者及び司法試験合格者に占める割合は年々先細りし、今となっては旧試験の時よりも低い割合になっています。圧倒的に法学部出身者・社会人経験をしていない人が司法試験合格者の大部分を占めているのです。法科大学院制度を導入して、法曹の給源の多様性が損なわれているのに、予備試験を更に制限したのでは、益々法曹の給源が狭まってしまいます。

 更に言えば、「弁護士がつぶれても知ったこっちゃない。」などという一方で、「自分たちの権益だけは守るべし。」というのは、あまりにも身勝手な主張ではないでしょうか。 
 このような主張を通すことは、社会正義実現のための司法制度からは最も離れてしまうのであって、絶対にしてはならないことです。

 もう一つの間違いは、予備試験を制限すれば法科大学院入学者が増えるとの予想です。予備試験を制限すれば、益々法科大学院入学者減が加速すると思います。法科大学院人気がないのは、予備試験制度があるからではなく、法科大学院制度の構造そのものに根拠があるからです。

 予備試験合格者の法学部生・法科大学院生の占める割合が大きいのですが、以前もこのブログで申し上げたように、その方々の多くは、予備試験を本筋として、すなわち、予備試験に合格できなかった時でも司法試験を受けられるようにとの「保険」の意味で法科大学院に通っておられます。いわば、予備試験人気が法科大学院入学者を牽引しているのです。

  従って、予備試験を制限乃至廃止すれば、今以上に法曹自体を目指さなくない人が増える、すなわち、法科大学院自体に通う人の人数の急減が加速するということが大いに考えられるのです。

 ただ、さすがに、法科大学院関係者も予備試験を更に制限すれば、法科大学院制度自体が立ち行かなるとの危機感を懐いているせいか、現在は、法科大学院存続のための別の路線が現在浮上しています。

 それは、大学の飛び級と法科大学院の短縮等という形で司法試験を受けられるようにするものです。
 例えば、大学の飛び級制度を積極的に活用して、3年(学部)+2年(法科大学院)あるいは、3年(学部)+1年(法科大学院)で司法試験を受けられるようにする方向での検討がされているようです。
 
 ただ、3年+1年であれば、法学部と法科大学院との教授は、共通しますから、結局は、法学部の授業や人事を充実・強化させれば良いだけのように思います。

 結局、いずれにしても無理があります。
 この無理はどこからくるかというと、それは、法科大学院を中心にしてこの司法改革が行われているからだと思います。

 いい加減法科大学院のための司法改革からは脱却しなければならないと思います。

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