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生体肝移植の患者ご家族の声(その1)

2015.06.13

 

  生体肝移植を受け、その後、亡くなられた患者Aさんの奥様の手記をご本人の許可を得て、2回に分けて全文掲載させていただきます。
 
 Aさんのご冥福を心からお祈り申しあげます。

                      記
「    報道機関の皆様へのお願い

夫の生体肝移植手術後の一連の報道を拝見するに当たり、神戸国際フロンティアメディカルセンター(以下、「キフメック」と言います。)で生体肝移植を受け、亡くなった患者のドナーであり、妻であり、また家族として申し上げます。
私たち家族は、一連の医師の方々の発言に傷ついています。
 
まず、「連携を含めた体制が十分に整備されないまま、立ち入り検査前に手術を再開するのは理解に苦しむ」と神戸市医師会会長のコメントが報道されました。

しかし、キフメックの体制が不十分ということはありませんでした。院内及び院外における連携も取れていたのではないかと思います。患者家族の実感として、そのように感じました。また、夫が亡くなるまで、またドナーである私の現在の入院中もキフメックの医師と医療スタッフには万全の体制で本当によくして戴いています。
「難しい症例であればこそ大病院で万全の体制が整ったところへ依頼すべきだったと思います。」との医師のコメントがありました。
記者会見でも申し上げましたが、夫は生体肝移植の権威ある大病院に生体肝移植の手術を断られ、キフメック以外に夫の生体肝移植を引き受けてくれる権威ある大病院は既に存在しなかったのです。
亡き夫も私たち家族も、他の大病院が断るような難しい患者を受け入れ手術して戴いたキフメックの医師の方々には、今も感謝の気持ちしかありません。
 医師会の会長も日本移植学会の先生方も「神戸市の立入り検査が行われる前に手術をいわば強行されたことは理解に苦しむ」という意味のことを言っておられると伺いました。この発言も私たち家族を傷つける言葉です。私たちは、神戸市に対して「キフメックは、神戸市の立入調査が終わるまで生体肝移植を再開しないと言っている。一日も早く神戸市の立入調査を実施して欲しい」と書面と口頭で申入れました。
ところが、神戸市の立入調査は幾度にもわたって延期されてしまいました。
神戸市の説明は、「立入調査は生体肝移植にお墨付きを与えるものではなく、定例の立入検査に過ぎない。病院に対しても『立入調査とは関係なく、病院の判断で生体肝移植をするかどうかを判断して欲しい。』と言っている。」というものでした。
神戸市の立入調査は、あまりにも何度も、長期間延期されるので、我々患者側は、誰かが責任逃れのために、引き伸ばしているのではないかとの不信感を抱いたほどでした。
また、神戸市は、「立入調査は6月8日以降」と言っておられただけで、手術日が決まる前には、立入調査の日程は決まっていませんでした。6月8日の立入調査の日程が決まったのは、キフメックが夫の生体肝移植の実施を決めた後のことでした。
何時神戸市の立入調査が行われるかわからない中で、それでも「神戸市の立入調査を待つ」などということは私たちには考えられませんでした。」(つづく)

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