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生体肝移植の患者ご家族の声(その2)

2015.06.14

 

 生体肝移植の患者Aさんのご家族の声の続きです。

「 それと、キフメックでの生体肝移植が中断されている間に、キフメックでの生体肝移植を待ち望んでいた患者お二人が亡くなったとも聞きました。患者さんとそのご家族は、さぞかし無念だったことと思います。
私の夫は『生体肝移植をしなければ、あと数か月の命』と宣告されていました。「神戸市の立入調査を待つべきだった」とのことですが、その間に私の夫も生体肝移植を受けることなく、お二人のように亡くなっていた可能性は十分ありました。
幾度も引き延ばされる立入調査を待ち「生体肝移植さえ行われていれば」との悔いを残して何もせずに死んで行けと言われるのでしょうか。
また、日本移植学会の先生方の「このままでは日本の移植医療の信用が失われる」というコメントには、私たち家族はさらに傷つきました。私たち患者は、先生方の成績を上げたり、信用を上げたりするために生体肝移植をお願いしているのではありません。
成功率の高い、簡単な患者ばかりを手術していれば、手術成績は上がり、先生方の移植医療の信用は上がるかもしれません。しかし、そういう観点から患者を選別することが、ドナーが見つかったのに移植を受けられない悔しさの中で亡くなっていく多くの患者を生み出しているということを考えて戴きたいと思います。
医療は患者を救うためのもので、医師の実績や信用を増すためのものではないと信じたいです。
そういう観点から見て、今回の手術は、キフメックの医師の方々が患者の立場に立って考えて戴いた末の、リスクを振り払った素晴らしい勇気ある決断だったと感謝しています。
  今回手術が受けられなかったら、数か月後、夫は無念と悔恨の内にこの世を去ることになったでしょう。
そして、同じく、手術が受けられなかったという無念と悔恨は、私たち家族を今後何年ともしれず苦しめ続けることになったでしょう。
実際には、私たちからの再三に亘る申し入れや夫の体調を考慮してキフメックで手術をして戴けることになりました。夫は、先月15日にマスコミの前で自分の気持ちを言うことができ、以降、気が楽になったようで、それまで溜まっていた胸水も不思議と自然に抜けるようになりました。また、手術日が決定してからは、夫は気力が充実し、表情も一変しました。夫は死の絶望の淵から生きる希望を見出すことができました。この姿が見られたことだけでも、家族には大変有り難いことでした。
手術は、翌朝5時過ぎまでかかりました。夫はその長い手術に耐え、医師の方々も大変だったと思いますが、困難な手術をやり終えて戴きました。
手術後、ドナーである私は、ベッドを夫の横に並べて戴き、ずっと夫を見守り、手を握っておりました。長い夫婦生活の最期に、手術の成功という同じ希望を夢見て過ごせたことは、私たち夫婦にとって幸せなことでした。この幸せを与えて戴いたキフメックの皆様には、心から感謝しております。
夫や私たち家族のように他の病院で見放された患者さんがキフメックで生体肝移植を受けられることを心から願ってやみません。
私の夫の件でキフメックでの生体肝移植を再度中断させるようなことだけはないよう、皆様のご尽力を賜りますようお願い申し上げます。
そして、医師の方々には、「医療は医師のためではなく、患者のためにある」との原点に立ち戻り、患者を選別することなく、多くの命の危機にある方々に移植医療の恩恵を施していただけるよう切に希望しております。

                                         平成27年6月10日

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