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司法試験問題・解答漏洩問題に対する四宮教授のコメント

2015.09.22

 

  國學院大學法科大学院の四宮啓教授のNHKでのコメントが弁護士の間で話題になっています。
  福岡の向原栄太朗弁護士もブログ(http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-12075399952.html)で四宮教授の発言を取り上げておられます。向原先生のご意見と重複する部分もありますが、私なりの意見を申し上げたいと思います。

 1)四宮コメント①司法試験合格者数が少なすぎるという主張に対して 

 先日のブログでも申しあげたとおり、司法試験合格率が今(25%)よりも10倍以上低かった旧司法試験(1%~2%)の時に司法試験漏洩問題が起きなかったことからして、統計上間違っていることをまず指摘しなければならないでしょう。
 この四宮先生のコメントは、「逆ギレ」発言と評されても仕方ないのではないでしょうか。
 いかにも今回の問題は司法試験合格率を上げない方が悪いとでも言わんばかりです。
 法学者で、教育者でもあるのですから、公のメディアにご自分の意見を載せる際には、真摯な対応を心がけるべきであると思います。
  
 2)四宮コメント② 法科大学院ではプロセス教育をしっかりやっている という主張に対して

 そもそも「プロセス教育」とやらの内容が不明瞭です。
 
 「プロセス教育」がどのようなものか、具体的に何を指していっておられるのかがよくわかりませんが、「プロセス教育」がどのようなものであれ、仮に「プロセス教育」とやらを法科大学院がしっかり行っていたら、慶応大学法科大学院の司法試験問題の漏洩や今回の明治大学法科大学院の教授による司法試験及び解答の漏洩などといった問題は起こらなかったと思います。

 「プロセス教育」というものがどのようなものかは置くとして、法科大学院によって教育内容、教育レベルがまちまちで、教育の質に問題がある法科大学院の授業が多々あることは政治家、元法科大学院生のみならず、法科大学院教授からもよく伺うところです。

 何より法科大学院の教育の問題と今回の司法試験及び解答の漏洩問題が論理的にどのように繋がるのかがわかりません。
 まさかしっかりとした「プロセス教育」をしていれば不正をしても許されると言うことを仰りたいのではないと思いますが、論旨不明瞭です。
 報道は、雑談とは違います。
 法学者・法曹である以上、論理的に関係するお話をして戴きたいと思います。
 もしかしたら、マスコミの編集に問題があるのかもしれませんが・・・。
 
 3)四宮コメント③「多様なバックグラウンドを有する、しっかりとしたプロセス教育を経た、多くの法律家が世に満ちる」ことを国民が望んでいる という主張に対して

 そもそも国民が法科大学院制度の創設を求めた事実はありません。
 私の知る限り、司法改革以前には、法科大学院制度を求める報道は存在していませんでした。
 この点、複数の文部科学省族議員の方が「法科大学院制度は一夜にしてできた。自分もできるとは思っていなかった。」と言っておられました。
 
 更に、法科大学院制度に移行してから、多様なバックグラウンドを持つ法律家の割合は減少しています。今や、旧司法試験制度の時よりも非法学部出身者・社会人経験者の割合は、少なくなっています。
 司法試験受験者数及び法科大学院志願者数も激減しているのです。

 また、多様なバックグラウンドを持った法曹を国民が望んでいることと今回の司法試験&解答漏洩問題とが論理的にどのように繋がるかが不明です。
 この部分もマスコミの編集に問題があるかもしれないので、別の機会にでもご説明戴きたいと思います。

 4)四宮コメント④ 合格者を少なくして、無用な競争を煽るから、こんな問題が起こる という主張
及び
 5)四宮コメント⓹ もっと一杯合格させたら、こんな問題がそもそも起こらなくなる という主張に対して

 繰り返しになりますが、司法試験合格率が10分の1以下であった旧司法試験時代には試験漏洩問題がなかったことと比較すれば、不合理な説明であるということは明白です。
 
 不合理であるばかりではなく、不誠実な説明でもあります。
 なぜなら、司法試験合格者数も司法試験合格率も旧試験時代よりも激増しているのに、あたかも司法試験合格者数や司法試験合格率が不当に抑制されているかのごとく視聴者をミスリードしているからです。

 仮に、合格率が低く抑えられているのが今回の問題の原因であったとしたら、何故旧司法試験時代にはこのような問題が起きなかったのかをまずもってご説明戴きたいと思います。

 この部分も「逆ギレ」発言とのそしりを免れないと思いますが、いかがでしょうか

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