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札幌公聴会の応援演説(岩田圭只弁護士)(3)

2024.01.20

 

岩田圭只弁護士による応援演説(3)
以下、引用

「今の法テラスをみると、司法制度改革の目玉として立ち上げてみたものの伸び悩みが顕著となっていることで、存在意義を忘れて右往左往している感すらあります。驚くべきことに、昨年の年末には、予算が足りなくなったから開始決定が後回しになるかもしれないという趣旨の通知が来ました。一方で、償還免除の申請は積極的にやって欲しいと言われますし、震災関連では資力を問わない援助も可能だと案内が来ます。
 こうした状況を根本的に改善すべきだ、と日弁連は言い続けなければいけないわけです。ただでさえ提出書類が多くて手間が掛かる、手間がかかる上にもらえる費用が少ない、というのでは担い手の意欲は大いに損なわれることになります。手続面の負担感を軽減するといった表層的な対策のみで改善するものではありません。担い手に十分な対価を付与することで供給されるサービスの総量を増加させる、という方針に、日弁連は正面から取り組む必要があります。

 更に、日弁連が求心力を失っているのではないか、ということについても少々考えてみます。
近年の人権擁護の団体としての日弁連の弱体化は著しいものがあるように見えます。2つほど例をあげます。
 一昨年に旭川で行われた人権大会ではアイヌ民族の権利の保障を求める決議がなされておりますが、その際に国際交流委員会の総意として反対だとの意見がありました。自由な議論がなされるのは大変結構なことですが、道内で先輩の弁護士たちがアイヌ民族の権利擁護のために大変な苦労をしてきたことや、実際に様々な差別的言動を見聞きしてきた立場としては、そのような貴重なご意見もあるんですねというよりは、自国内の人権問題であるにもかかわらず見ている視点がおよそ異なり、見える世界は全く違うのであろうと、只々溜め息をつくしかないような出来事として受け止めざるを得ませんでした。
 また、日弁連では死刑廃止に向けた運動もしておりますが、死刑廃止について根強い反対論を説得しきれていないようにも見えます。勿論、死刑存置の考えには我が国の法文化的な背景もあるとしても、人の生命の処分をどうするかという究極的な人権擁護の問題を含むテーマである以上、国際的な潮流はもはや無視できないところです。しかし、この問題についても、重要な人権課題でありながら日弁連は必ずしも効果的な活動ができないままに苦しんでいるようにも見えます。
 もちろん、こういった人権課題への取り組みに対しては様々な意見があってしかるべきではありますが、実際は様々に分散する会員の考えをまとめきれないから団体としての活動もますます厳しくなっている、という状況が現実化しているように思います。
構成員の多様化が進んで行くことは結構なことですが、日弁連はもはや多様な立場を包摂できない弱い団体となってしまいました。法律家団体の本丸であるというべき人権課題についてすら、日弁連は必ずしも積極的な行動を取ることができず、法律家団体としての弱体化へとつながっている、という現状にあります。

このように、業界を志願する人がはなれ、市民がはなれ、そして会務を担う弁護士もはなれる、要するに、みんなばらばらとなってしまっているというのが日弁連の今の状況です。
 
このような事態を変えよう、というのが及川さんの立場であろうと私は理解をしております。
日弁連の会長となっている方々のバックグラウンドは人により様々ではありますが、一時期の例外を除き、事務総長あるいは副会長などの日弁連の要職を経て会務に十分に通じた人が就任しております。もちろん、会務に通じた人材が継続的に会務に取り組むことは重要ですが、逆に言えば、何か問題が起こっているとしても前例踏襲的な会務執行が継続されることにもなりがちです。今まで会務を担ってきた方々とつながる立場にあれば、今までと違うことを言ったりやったりするのは、心情的にも構造的にも難しいのは当たり前です。ただ、その結果として業界に様々な停滞感が蔓延するに至るということになれば、いかがなものでしょうか。
やはり、選挙の5~6回に1度くらいは視点が変わるような変化があることが日弁連の活性化のためには必要だと考えます。
そういうことを思い、及川さんを再び推薦することにいたしました。」(続く)

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