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2009.11.16
先日、「子曰、君子矜而不争、羣而不党」(「子曰く、君子は矜(きょう)にして争わず、群して党せず。」)「諸君は自尊心をもちながらしかも排斥しあわず、共同に仕事をしながら、しかも派閥を作らぬように心掛けるがよい」(宮崎市定著「論語の新研究」)と言う孔子の言葉をご紹介しました。
人間にとって自尊心を持つと言うことは、大切なことです。
アメリカの調査で、少年事件で被害者の生の被害感情を少年に直接ぶつけた案件とそうでない案件とで比較調査したところ、被害者の生の被害感情をぶつけなかった少年の方が更生する確立が高かったそうです。
もともと事件を起こす少年は家庭環境が複雑で、自尊心を持つことができず、自暴自棄に陥りやすいことがその背景にあるようです。
先日、弁護士が破産管財人を勤める事件で、破産財団から72万円を着服して、その犯罪を隠すために偽の東京地検特捜部の報告書を作成したことにより業務上横領と有印公文書偽造等の被疑事実で逮捕されたことが報道されました。
弁護士が不祥事を起こした場合、弁護士会による懲戒制度がありますが、弁護士の職務は、専門的で外からわかりにくいものです。
そのため、弁護士の職務を律するのにとって、弁護士自らの自尊心と自制心が一番効果的なものでした。
事実、これまでは弁護士の不祥事は、今日ほど多くはありませんでした。
しかし、これから、誰でも大して苦労せずとも司法試験に合格するようになり、赤字経営の弁護士が増えていけば、弁護士がこれまで持つことのできた自尊心を保つことは不可能に近くなるでしょう。
結果、これまでのような自尊心による自制は効かなくなり、弁護士の不祥事は益々増えていくと思われます。
弁護士の不祥事が増えれば、「弁護士を律するためには、弁護士に自治を認めていては駄目だ。」などと言った議論さえ出てきかねません。
そうなれば、弁護士の一番大事な社会的使命である、国家機関の暴走を止めることのできる唯一の民間団体としての機能が果たせなくなるでしょう。
その時こそ、最も怖れていた社会が出現するというわけです。