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2010.04.21
先日、上告されていた事件の弁論期日で最高裁判所に行ってきました。
最高裁判所での弁論というのは、弁護士であってもあまり経験することはありません。
理由は、もともと上告する事件自体が少ないということと、仮に上告しても、最高裁判所から弁論が開かれることなく、「上告棄却」「上告却下」といった門前払いの判断を受けることが多いからです。その場合、ある日、1枚ペラの最高裁から上告を退けられる紙が事務所に届きます。
ですから、弁護士になってかなりの年数を重ねてはいますが、最高裁判所で弁論が開かれる経験は初めてのことでした。
最高裁判所は皇居の近くにある要塞のような建物で、あたかも人の席巻を拒むかのごとき閉鎖的な様相を呈しています。
実際、建物に入る前に裏にある南門の前で守衛の人に名前を告げ、どの事件で来たのか、どういった立場で来たのか(傍聴人として来たのか、代理人として来たのか)、そういうことも告げて傍聴人でも番号のついたバッチをもらい、案内の人に従っていかなければ建物に入ることはできません。
建物に入る際には、筆記具以外は全てロッカーに預けさせられ、その後、金属探知機による検査を受け、凶器等を持っていないかといったチェックを受けます。私は、「パソコンを法廷に持って入りたい」と守衛の人に言いましたが、断られました。
それから、係りの人に待合場所に連れて行かれ、時間が来たところで、やっと法廷に入ることができます。
代理人は別の控え室に連れて行かれ、劇場のような法廷に連れて行かれます。
建物は迷路のようで、建物内部の構造がどのようになっているのか、自分が今どこを歩かされているのか、どこへ連れて行かれようとしているのかさっぱりわかりません。
法廷に入ると、弁論が始まるにあたり、それこそ劇の始まりを告げるように、袖の方から女性の係員が出てきて「ただいまより弁論を始めます。」とだけ告げて深々と頭を下げてまた袖に下がっていきました。私は思わず学生時代にオックスフォードで見たシェークスピアの劇を見ていた時に一瞬タイムスリップしたような錯覚を覚えました。
弁論が始まっても劇のような法廷が続きます。
原審や控訴審での弁論の場合は、弁護士は「書面のとおり陳述します」とだけ申し上げるのですが、最高裁の場合は、弁論に書かれてある内容を口頭で全て朗読するのです。
弁論は、30分くらいで終わり、最後に判決期日が決まり終結しました。
最高裁判所の弁論は、本当に重々しく、大変興味深いものでした。
しかし、いかに裁判所が『市民に身近な司法』との御旗の下に進められている司法改革から取り残されているのかがよくわかりました。
そして、最高裁での弁論を受けていると、あの司法改革の御旗は一体全体どこへ行ったのかしら、との疑問を感じざるを得ませんでした。
司法改革は、まず、最高裁判所から始めましょうよ。