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「就職難」は一部の問題?

2010.05.30

 

 asahi.comの「社会人のための大学院ガイド」に「今では「弁護士でも就職難」と喧伝されているのだが、あくまで一部の話であり、大多数は弁護士事務所またはローファームに就職している。企業内弁護士も増加しているから、入学前から心配する要素ではないと考えられる」(http://www.asahi.com/ad/clients/daigakuin/guide/vol2.html)と記載されていますが、本当なのでしょうか?

 東京大学卒でも京都大学卒でさえも就職先のない修習生の情報が入ってきており、私には「就職難」があくまでも「一部の話」とは到底思えません。

 大手渉外事務所は、軒並み募集人員を半減させています(これは実際に当事者から伺った話です。)。

 修習生の研修を担当している弁護士によると、修習生との間で就職の話を絶対にしないそうです。 なぜなら、修習生に就職の話をするとその後、必ずその修習生の就職先を探す羽目になるが、探す努力をしても、結局は、就職先を見つけられないことが分かっているからだそうです。

 弁護士会も、修習生の就職紹介・斡旋をあきらめつつあります。
 修習生と弁護士事務所を引き合わせる就職説明会も複数の弁護士会が既に廃止しています。就職説明会を開いても募集する事務所がほんの数事務所なのに、修習生は全国から数百人が集まります。遠方から来る修習生もいるのですが、その交通費や宿泊費は全て修習生持ちです。多額の交通費や宿泊費、時間を負担させて全国から修習生を集めても数人しか就職先が決まらないというのでは、残り数百人に無駄な時間とお金を使わせることになります。それでは、修習生にとっての費用対効果があまりにも悪すぎるというのが廃止の理由です。
 
 そのため、司法研修所の卒業試験(二回試験)に合格しても、一括登録日に弁護士として登録できない、あるいは、登録しない人が最近では、100人を超えています(https://www.veritas-law.jp/ronbun_doc/20091004185320_1.pdf#search='弁護士事務所 求人アンケート')。
  
 企業内弁護士の数も希望的観測に反して増えていません。
 日弁連の統計により、既に企業や官公庁が弁護士を採用する予定がないことは明白になっています。
 だいたい企業内弁護士になりたいからといって高い学費と年数のかかる法科大学院に入学する人がどれほどいるのでしょうか?会社員になりたいのであれば、大学卒業後、すぐに就職した方が条件面でも有利になる可能性が高いのですから。

 実際、法科大学院を出るまでに、よほどのお金持ちの人以外は、皆学費と生活費で数百万円(多い人で1300万円弱)の借金を抱えています。その上、今年の11月から、司法試験合格後の1年間の修習生の給与が廃止され、貸与制に変更される予定になっています。そうなれば、1年間の貸与制の金額300万円が法科大学院を出るまでの上記借金に加算されることになります。

 asahi.comの上記法科大学院の宣伝には、三振アウト以外のこれらリスクについては、全く触れられていません。

 人の人生を左右する宣伝なのですから、もう少し誠実に報道すべきだと思います。
 これでは、あまりにも無責任とのそしりを免れないでしょう。 
 
 

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