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2010.06.26
平成22年6月20日付毎日新聞ニュース争論での高木剛氏は、「「小さな司法」からの脱却に成功したと評価するには、まだ不十分な状況にある。」と言われます。
高木氏の意見は「小さな司法」よりも「大きな司法」の方が良いとの評価が前提となっています。しかし、「小さな司法」よりも「大きな司法」の方が良いとは限りません。私は、むしろ「小さな司法」の方が「大きな司法」よりも良いと思っています。詳しくは、私のHPの司法改革関連資料の中に掲載されている拙稿「原理・原則」に譲り、ここでは深入りはしません。
万歩譲って「大きな司法」が良いということを前提としても、「大きな司法」とは弁護士人口の激増のみを指すわけではありません。「大きな司法」のためには司法予算の増大が不可欠です。ところが、司法予算は、一向に増える気配がありません。人数についても裁判官や検察官の激増が不可避なのですが、司法改革以後、1年間に裁判官や検察官になる人の数は増えていません。
ちなみに、弁護士としての就職先がなく弁護士になっても生活できないこともあって、裁判官・検察官志望者は急激に増えています。ところが、裁判所や法務省が裁判官や検察官を希望する人を任官させないので、年間任官者数が増えないのです。
高木氏は、日本の裁判をもっと迅速に進めるべきとのご意見のようですが、それならば、弁護士のみを増やしても意味がありません。裁判所の都合で期日が入らないことだって多いのです。例えば、裁判官は、3週間もの夏休みを取るので、その前後は予定が詰まり、約1ヶ月間は裁判が事実上、止まってしまいます。
裁判所は、2班に分かれて1ヶ月交代で裁判官(職員も)が休むので、2ヶ月近く裁判所の開店休業状態が続きます。
その間、弁護士がいくら都合が良くても期日が入らないのです。
弁護士は人数が増えすぎてしまい、ボランティア活動で忙しくしている以外は、弁護士の方は、最近は期日が入りやすいと思います。
「大きい司法」が良いというのなら、何故、司法予算の増大や裁判官の増員を唱えないのでしょうか。「大きい司法」というのなら、弁護士激増よりも司法予算の増大の方がはるかに重要なのに。
高木氏は司法制度改革審議会の委員もされていたわけですから、「「大きな司法」イコール弁護士激増のみを意味するものでない」ことくらいわかりそうなものなのですが、何故このような非合理的なことを恥ずかしげもなく公の場で当たり前のように言えるのか、私には全く理解できません。