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法曹人口はなぜ増えない(その3)

2010.07.01

 

 高木氏は、「事前型規制社会から事後チェック型社会への移行に伴い、司法がチェック機能を果たす役割も期待された。」と言われます。

 しかし、「事前規制型社会」と「事後チェック型社会」を比較して、どうして「事後チェック型社会」の方が良いと言えるのでしょうか?
 両者を比較すれば、「事前規制型社会の方が良いに決まっています。

 事前規制型社会では、悪質業者等が社会に参入する前に規制することができますので、犠牲者を事前に、かつ、一般的に防ぐことができます。
 しかし、「事後チェック型社会」では、参入時に悪質業者の参入を防ぐことはできません。「事後チェック型社会」では、犠牲者が自らの被害を自覚し、救済を求め、その訴えが認められて、初めて悪質業者を規制をすることができます。

 また、事後チェック型社会では、個別救済が原則です。従って、自らの被害に気づかない人や被害自体には気づいても救済を求める時間的・経済的・精神的余裕のない人は救済されません。すなわち、「事後チェック型社会」には、社会的負担においても事前規制型社会と比較して効率性に劣るのです。例えば、裁判を訴える際の(弁護士や裁判所にかかる)費用負担と膨大な時間、そして、当事者の精神的負担を考えていただければ容易にわかることです。

 その上、裁判に勝った人のみ(被害を訴えでて認められた人のみ)が原則的に救済を得られます。
 そのため、「事後チェック型社会」は、費用対効果において、事前規制による救済に明らかに劣るのです。

 「事後チェック型社会」は、悪質業者にビジネスチャンスを与える以外に誰にどのようなメリットがあるというのでしょうか。

 高木氏は、「事後チェック型社会」の方が「事前規制型社会」よりも良いことが論証不要の当たり前のことであるかのごとく話をされています。しかし、まずは、何故、「事後チェック型社会」の方が「事前規制型社会」よりも勝るのかについて、論ずる必要があるのではないでしょうか。

 また、高木氏はさらに続けて「日弁連も法曹人口増加に賛同していたはずだ。」(だから、今になって反対するな。)と言われます。

 他の部分も一貫して論理不在ですが、「日弁連も法曹人口増加に賛成していたはずだ。」というのは、最も非論理的部分です。

 確かに、日弁連旧主流派は、年間司法試験合格者数3000人に賛成しました。
 しかし、仮に、過去に賛成したとしても、それが間違いであるとわかったら、方針を変更して一体何が悪いのでしょうか?

 一旦言い出したとしても、それが社会正義実現に反するとわかったら、直ちに進路変更をすることこそが、社会正義実現の法的使命を負う弁護士のあるべき姿のはずです。

 「過ちて改めざる、これを過ちと謂う」

 かの有名な論語の言葉を、高木氏はご存知ないのでしょうね。

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