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弁護士が「儲からない」のは当然?

2010.07.21

 

 私達が弁護士を経済的に追い込むことによる社会的弊害を指摘すると、同業者(弁護士)やマスコミ等から必ず言われるのは、「他の民間企業もこの不景気で潰れていっている。弁護士だけが経済的に安泰という考え方がそもそも間違いだ。」との指摘を受けます。

 しかし、この考え方は3つの点で誤りです。

 第1に、私達は、弁護士だけでなく、他の職業も成り立つ社会にすべきだと言っているのであって、弁護士業「だけ」が食べられるようにすべきと言っているわけでは必ずしもありません。

 第2に、『弁護士が食べられなくて何が悪い。』と言われる方には、弁護士の扱う業務や弁護士そのものの危険性についての認識が欠如しています。
 弁護士は、その扱う業務が人の人権を直接切り刻む怖い職業であり、その専門性からして、権限を濫用したり誤用しても発覚しにくい面があります。例えば、希望すれば誰でも医師になることができ、大して知識や訓練も受けていない医師が簡単に手術ができるような社会になったら、貴方は安心して病気にもなれないのではないでしょうか?
 また、弁護士は人様のお金を預かりますし、非合法組織や悪徳業者等から悪用されやすい職業でもあります。実際、法務委員会では既に弁護士が悪用される実態の存在が指摘され、議事録にも掲載されています。
 弁護士の業務が悪用され、失われるのは、人の人権であり、社会正義です。
 「弁護士が食べられないのは当然」と言われる方は、弁護士業が悪用され弁護士により人権が侵害されても何とも思わない、人権感覚が鈍磨している人であると批判されても仕方ないでしょう。

 第3に、上記考え方は、弁護士間で自由競争が成り立つことが前提となっている点です。
 弁護士と言う職業は、社会に存在する職業の中でも最も自由競争の馴染みにくい職業です。例えば、皆、病院には、一生のうち何十回となく行きますので、ある程度口コミや過去の体験から患者が良い医師を判断することが可能かも知れません。
 しかし、弁護士の場合、人生に1度か2度弁護士に御世話になる人が周りにいるかいないかと言ったレベルです。過去の自分の体験から選ぶこともできません。弁護士から聞く話しは専門的で相談に行く段階でその弁護士の言っている事が正しいかどうか等わかりません。

 我々弁護士の仲間内でよく言われる事に「営業力と弁護士としての技能・人格は反比例する。」と言うことです。「弁護士から信頼される弁護士」と「営業的に成功している弁護士」とは、不思議なほど合致しません。
 また、そもそもスタートラインが違います。例えば、若手弁護士は、就職先もなく、コネクションもありません。それどころか、弁護士としてスタートした時点から数百万円から1000万円超の借金を抱えています。これに対し、中堅より上の弁護士は、既に上場企業等顧問先を持っていたりします。更に、これまで長年に亘る事件経験から紹介を受ける機会にも恵まれています。

 最大の問題は、「自ら血を流すべき」として司法改革を積極的に推し進めた弁護士に限って安穏としているのに対して、司法改革の結果、自らの血を流させられるのは司法改革に反対する機会さえ与えられることのなかった若手弁護士であるということです。

 退場して戴くべき人は、佐藤幸司や高木剛のみではありませんね。


 

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