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2010.07.24
7月21日の報道で、日弁連が「司法修習生のうち、今年6月時点で就職先が決まっていない人が43%に上り、昨年同時期の30%を大幅に上回ったとする調査結果を公表した。日弁連は「このままでは修習を終えても仕事ができない者が大量に出る。危機的状況だ」と懸念している。」との記事が出ました。(http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2010072100777)
日弁連が実施した2009年求人アンケートによれば、昨年の一括登録日に弁護士登録できなかった人は、184名に上ります(http://www.nichibenren.or.jp/ja/committee/list/data/2009kyujin_enquete_bunseki.pdf (67,)。
今年、一括登録日に弁護士登録できない人は、おそらく250名を越えることになるでしょう。
毎年、弁護士会から修習生を雇うようにとのお願いの連絡を受け取ります。
でも、どの事務所も新人弁護士を雇う余裕があるようには見えません。
実際、日弁連の実施している上記求人アンケートでも、求人数は激減しています。
それどころか、大手事務所の中には、事務所経費を捻出するために借り入れを始める事務所も出てきたという話をちらほら聞きます。
弁護士を雇うためには、事務所スペース・パソコンといった物的な経費も必要ですが、それよりも事務員を増やさなければならず、新人弁護士を1人雇い入れるために必要な経費の増加は、その新人弁護士の給料の額のみで足りるわけではありません。
事務所を大きくすればするほど毎月の経費はものすごい金額に上ります。
これまで司法改革を進めてこられた弁護士、或は、未だに合格者数を激増すべきと性懲りもなく言っておられる弁護士が新人弁護士を毎年大量採用すべきだと思うのですが、新人弁護士の雇用などどこ吹く風、「企業や公共団体で活躍できる無限の可能性を秘めている君達がうらやましい。」「企業や地方公共団体は弁護士を求めている。」などといったことを平気で言われます。
弁護士登録をするまでには、大学卒業後、年間150万円程度の学費のかかる法科大学院に、2・3年通い、司法試験合格後は、1年間、司法修習を経る必要があります。しかもその3年から4年(司法試験にすぐに合格できなければそれ以上の)の間の生活費は別途かかります(今年から修習生の給料は国からの貸付になります。)。
このような膨大な年月と費用をかけて会社員や公務員になりたいと思う人がいるのでしょうか。大学卒業後に会社員や公務員になることもできるのです。その方がはるかに費用もかかりませんし、就職先の幅も広がります。わざわざ借金までして法科大学院に通っているのは、弁護士になり、社会正義や人権擁護のために働きたいと思っているからではないでしょうか。
また、企業や地方公共団体が弁護士を求めていないということは、既に日弁連や各地の弁護士会がアンケートを取っており、採用募集がほとんど存在しないことは統計上既に出ています。
それでも、今後は、司法試験合格後、司法修習を終了して、弁護士登録をせずに、企業や公共団体に就職する人が急激に増えると思います。
なぜなら、前述したとおり、弁護士事務所への就職口はほとんどないですし、弁護士登録直後に即時独立開業する、いわゆる「即独」弁護士になるのも限界があると思われるからです。
今は、「即独」しても、事務所経費を何とかすれすれ捻出できているようですが、今後、このまま、弁護士が増えすぎれば、これから「即独」しても経費捻出できるとは限りません。そのような状態で、法科大学院や浪人生等時代にできた学費と生活費の借金返済をしていけるとは到底思えず、それならば、どんな条件でも確実に給料が出る会社員や公務員の方がまだ「マシ」で、そちらの方を選ばざるを得ないからです。
すなわち、司法試験合格後、会社員や公務員になる数は今後、増えますが、それは企業や公共団体が弁護士を求める結果ではなく、弁護士に対する社会的需要がなく、修習生の行き場がないからに他なりません。
この点を確認しておく必要があります。
そうでないと、このような事実でさえ捻じ曲げられ、論理が摩り替えられて、司法改革推進論者の自己正当化根拠に使われかねませんから。