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2010.07.25
日弁連では、法曹人口に関する基本政策について世論の理解及び支持を得るために「法曹人口政策会議」なる委員会を立ち上げ、そこで、法的ニーズの問題や法科大学院の問題,それから質という観点から司法修習の問題,法曹養成の問題,あらゆる問題を検討するそうです。
この法曹人口政策会議の第1回会議は、8月21日に行われるのですが、理事者は全員委員になり、その他各連合会から4名の選任に加え、日弁連会長選任枠が23名あります。
私は、近畿弁護士連合会推薦枠から選任していただきました。
この「法曹人口政策会議」の設立要項にも日弁連理事会での日弁連副会長の説明にも「平成22年3月5日付け「『当面の法曹人口のあり方に関する提言』以降の当連合会の法曹人口問題に対する取り組み方についての答申書」を踏まえるとあります。
ところが、この答申書なる書面の内容は、酷い内容に満ちています。
例えば、「弁護士会が弁護士の生活基盤の確保を目的とし、あるいは競争を回避して現状維持をはかるため法曹人口の減員」「を主張するとすれば、身勝手な保身・権益維持のためと主張され、およそ世論の理解は得られない。そのような主張は、市民の法的ニーズに的確に応え「法の支配」を社会の隅々にまで浸透させるというあるべき法化社会の理念を忘れた業界のエゴイズムと厳しく批判される」としています。
私達が弁護士数の減員を主張するのは、社会的弊害や市民に対する弊害を回避するためであり、弁護士の保身・権益維持のためではありません。一体どこの誰が自己の「生活基盤の確保を目的とし、」「競争を回避して現状維持をはかるために」減員を主張しているというのでしょうか。
本当に人を侮辱するのもいい加減にして戴きたいものです。
実際、事件数は減っているのに、言いがかり訴訟は増えています。また、引直し計算をしても負債が残る部分には手をつけず、過払部分のみ取扱い、高い弁護士報酬を受取った後、債務者をそのままの状態で社会に放り出したり、或は、弁護士が一回も面談しないことを前提として事件を受任する等々社会的弊害は既に噴出しています。
市民の法的ニーズは、平成12年の段階から、統計結果は「弁護士は足りている」と言うことを示していました(司法制度改革審議会の調査書http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/tyousa/2001/survey-report.htmlをご参照ください。)。
また、上記答申書では、法的ニーズについて「潜在的ニーズ」という項目を設け、中小企業ニーズは「商工会・商工会議所とのネットワークなどのニーズ発掘活動により飛躍的に伸びる可能性があ」り、「大企業ニーズとしても」「潜在的には常に大きな法的ニーズを抱えている」とし、「市民ニーズについても」「潜在的ニーズが大きく開拓される可能性がある。」「グローバル化による今後大きな潜在的ニーズ」もあると記載されています。そして、「法律相談は」「減少傾向にあるが、このことが法的ニーズの減少を示すことにはならない。」と記載されています。
しかし、これまで長年にわたる日弁連や各単位会の涙ぐましい業務拡大の努力をもってしても、これらニーズを発掘することはできませんでした(ニーズを「発掘」しなければならないこと自体弁護士に対する「ニーズ」の存在しないことの証左ですし、弁護士が「ニーズ」を発掘する社会が望ましい社会とも言えませんが、それは置くことにします。)。
さらに言えば、弁護士数は激増しているのに、訴訟事件数は平成15年をピークに同年以降、減少する一方です。
また、数ヵ月後に弁護士一括登録日を迎えようというのに、修習生の約半数近くが就職先を見つけることができず、他の職業に就かざるを得ない状況が起きています。その上、この1年間で弁護士資格を返上する弁護士の数は、過去の約5倍に増えています。
かかる事実を前に、何を持って、どこから、そのような法的ニーズがあると言えるというのでしょうか。
実際、平成12年以降の日弁連のニーズ調査でも、その他あらゆる統計結果をもってしても弁護士に対する「法的ニーズは存在しない」ことが判明しました。
現実の法的ニーズを示す統計や調査が存在しないからこそ「潜在的ニーズ」として、「実際の統計には現れない」「潜在的」という枕詞を必ずつけるのでしょう。
日弁連主流派の理事は、もういい加減、世間や我々平弁護士を馬鹿にし騙すのは止めていただきたいものです。