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給費制維持が何故必要か。

2010.08.01

 

 司法修習生の給費制を何故維持しなければならないのでしょうか。
 
 それを考えるためには、まず、何故司法修習生に国から給与が支払われるようになったのかについて考える必要があると思います。

 司法修習生に国から給与が支払われるのは、法曹三者の公的役割を考えてのことです。
 
 裁判官・検察官・弁護士というのは、三権分立の一翼を担う司法の構成員です。司法は、立法や行政といったマジョリティによる決定や執行から漏れてしまった人の人権を救済するために、事後的に個別救済を求める国家システムです。

 さらに、弁護士は、国家権力が暴走したときに、国家権力の暴走を止めるための公共的存在としての役割をも期待されています。そのために、弁護士には、敢えて監督官庁を設けず、弁護士自身による自治(「弁護士自治」)が認められているのです。ちなみに、監督官庁のない民間団体は弁護士会以外には存在しないはずです。

 いわば、司法の構成員である法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)には、大なり小なり公共的存在・役割が求められているのです。

 この法曹三者に就くための研修期間である司法修習期間中、国が司法修習生に給与を支払って司法修習生を丸抱えし、同時に、司法修習生を24時間修習に専念させる修習専念義務を負わせると同時に、守秘義務を負わせて、修習の実を上げさせるシステムは、きわめて合理的な制度です。

 この司法修習生給費制の副次的効果として、弁護士は、完全在野ではあっても自らの公共的使命を意識し、修習時代の恩返しをすべく、弁護士になった後も、貧しい人の弁護や社会的意義あるボランティア的活動等公的活動にかなりの時間を割くわけです。

 他の隣接士業には、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する法的義務はありません。ところが、弁護士には、この基本的人権を擁護し、社会正義を実現する法的義務が負わされています。これは、ある意味弁護士が公共的役割を担うため、単なるビジネスマンであってはならないことに基づくのです。

 司法修習生の給費生を廃止すれば、いくら修習専念義務を負わせても1年間の生活費を何とか捻出するためにアルバイトをせざるを得ず、修習に専念することができにくくなるでしょう。
 
 また、弁護士のビジネス化は加速せざるを得ないでしょう。
 法科大学院で多額の学費・生活費による借金を負い、その上、1年間の修習期間中の生活費300万円が借金として上乗せされるわけですから、人の人権を救う前にまず自分の借金返済を優先せざるを得ないからです。
 その上、弁護士が自らの公的役割を意識することもなくなるからです。


 8月7日午後2時から兵庫県弁護士会本館4階講堂で給費制維持を訴える市民シンポが開かれます。
 私は、シンポのパネルディスカッションでコーディネーターをさせて戴く予定です。

 是非一人でも多くの方にご参集戴ければ幸いです。

 

 
 

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