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2010.08.15
従前は、刑事事件について、起訴された後のみ、国選(文字通り国が選ぶ)弁護人がついて弁護をしていたのですが、この制度が逮捕後、起訴されるまでの間(被疑者段階)にも拡大されることになりました(「被疑者国選」と言います。)。
そして、この被疑者国選の制度が弁護士数を激増させなければならないとの理由に使われました。
すなわち、被疑者弁護は、これまでお金があり私撰で弁護士をつけられる人に限られていましたが、被疑者国選が実現することにより、これまで被疑者段階で弁護士を依頼できなかった人が弁護士を依頼するようになる。その分弁護士の数が要るという理論です。
しかしながら、これも私達は「違う」と言ってきました。なぜなら、被疑者国選が実現する前でも、被疑者が起訴された後は、国選弁護がついて全て対応していたのです。そして、この起訴後の国選弁護は、弁護士数1万人5000人強の弁護士数でも行ってきたのです(現在の弁護士数は2万9000人弱)。被疑者国選の拡大は、これまで起訴後のみに弁護活動を行っていたのを起訴前に時間的にのばすに過ぎません。
起訴後の国選弁護をこれまでの弁護士数でも十分行ってきたわけですから、被疑者国選が対応できないはずがないのです。
この点は、私が「法曹人口問題の一考察」の中で既に述べていたことです(司法改革関連資料室ご参照下さい。)。
案の定、被疑者国選制度が実現してかなりの日数が経っていますが、「弁護士の数が少ないので、被疑者国選が実現できない。」との話しは聞いたことがありません。
今となっては、「被疑者国選の拡大に伴い弁護士の数を増やさなければならない。」との言い訳を言われる方は皆無です。
全くいい加減なものです。
昨年度、兵庫県弁護士会の法曹人口問題PTは、1000人決議を出すにあたり、当会の刑事弁護センターに対して「被疑者拡大、裁判員裁判開始などになどに伴う刑事弁護体制の確立から」1000人決議に対してどう思うか、との意見照会をさせられました。
その時の刑事弁護センターの回答は、「被疑者国選、裁判員裁判の開始などに伴う刑事弁護体制確立の問題は、単に弁護士人口を増加させることによって足りるというものではなく」「国民の付託に応えられる弁護士を養成するシステムを確保できるかが最優先の課題で」、「単に人数だけを確保しても国民の付託には応えきれなくなる」といったものでした。
まさに、人数さえ多くすれば良いというものではなく、質を確保することの方が大事であることを明確に述べて私達の1000人決議を後押しして戴いたわけです。
刑事弁護センターの、この格調高い意見に対してまともに反論できる人はいないのではないでしょうか。