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司法修習生の就職難

2010.08.25

 

 司法修習生の就職先が決まっていない割合が43%に上るとの数字が再三報道されています。
 
 30%の司法修習生が就職先を見つけることができないと仮定すると、弁護士になる1800人のうちの30%ですから、およそ500人が就職先を見つけることができないままに、世の中に放り出されることになります。
 日弁連や日本法務財団といった団体が弁護士以外の就職先を見つけるように修習生と企業等雇う側の双方に働きかけをしていますが、弁護士以外の就職先はほとんど増えていません。

 司法修習生のうち約半数が法科大学院を卒業して弁護士になるまでの間に数百万円から1000万円超の借金を抱えています。先日、聞いた話によると、学費・生活費としての借金が1400万円に上る修習生がいるとのことでした。
 今年11月から司法修習生の給料が貸与になれば、借金額がこれら借金額に自動的に300万円上乗せされることになります。
 なお、司法改革が始まる前には、司法試験に受かりさえすればよく、法科大学院などを出る必要がなかったので、借金を抱えて弁護士になる人は『全く』と言ってよいほど存在しませんでした。

 更に、就職先がないことから即時独立せざるを得ない弁護士が開業資金として、数百万円を借り入れるという話も聞きます。
 ノキ弁(給料がなく事件を分けてもらい一定割合の歩合金をもらう)の場合は開業資金を借りる必要はありませんが、それでも弁護士会入会時に高い登録料(30万円程度から140万円程度。※各単位会により異なります。)及び弁護士登録をしている限り毎月高い弁護士会費を支払う必要があります。
 弁護士としての毎月の会費は、地方によって異なります。例えば、兵庫県では、月額5万5000円程度、大阪では月額4万4000円程度、滋賀県では月額7万8000円程度とまるで住宅ローン並みの高い会費を弁護士として登録している限り支払わなければならないのです。
 ちなみに、他士業の人に弁護士会の会費の金額を言うと、皆さん「えっ!年会費の間違いではないですか?!」と一様に驚かれます。
 
 修習生にとって、就職先が確保できないというのは、弁護士としての実務的訓練ができないということだけでなく、学費や生活費としての借金返済ができないということを意味します。

 「ワーキングプア弁護士」と言われますが、一般の「ワーキングプア」層は借金を抱えていることを一般的に含意するわけではありません。従って、「ワーキングプア弁護士」というのは正確な表現ではなく、「ワーキングプア未満弁護士」というべきでしょう。

 「この社会的不景気の下で就職できないのは司法修習生だけではない。」とマスコミでは言われることがあります。
 しかし、43%の未就職率は一般の大学生の未就職率よりも高いでしょう。
 その上、司法修習生の場合、半数が多額の借金を抱えてのスタートで、かつ、弁護士業を営む限り、高い登録料や会費等を払わなければならない上での、『就職先がない』ということですから、一般の大学生の未就職率との単純比較はあまりにも酷い誤報道と批判されても仕方ないのではないでしょうか。 
 
 

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