最新情報詳細 一覧へ

< 一覧へ

弁護士は経済的に恵まれているか?!

2010.10.02

 

 司法修習生優遇に異論多く… 『給費制』存続険し
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010093002000027.html
 
 最高裁判所が日弁連に対して日弁連の給費制維持活動の足を止めるために質問書を出しました。最高裁がこのような積極的な政治的活動をするのはきわめて異例のことです。最高裁が日弁連に質問書を出すということは、何らの法律にも基づかない行為のはずです。しかも最高裁は日弁連に対して2回も質問書を出しました。よほど給費制維持を阻止したいのでしょう。

 日弁連からの回答書には、「新人勤務弁護士の初任給500万円以下が27.7パーセントとなっている」と記載されており、最高裁は、すかさず「それなら弁護士は恵まれているじゃないか。」と言わんばかりのコメントをマスコミに発表しました。

 しかし、私の聞く限り、実際は、7割以上の人が年収500万円以上の収入だとは到底考えられません。
 事実、弁護士が経済的に恵まれている」というのは幻想に過ぎません。
 
 また、初任給が500万円でも弁護士が経済的に恵まれているとは必ずしも言えないと思います。例えば、上記給与の中から年間50万円から100万円(弁護士会によって異なります。)の弁護士会費を捻出しなければなりません。また、当然のことながら、住民税・所得税・国民健康保険料金をその中から支払わなければなりません。その上、弁護士には有給休暇もなければ厚生年金もなく、退職金もありません。病気をすれば収入は途絶えるのに、経費は毎月必要となリますので、貯金がなければ経費が全てそのまま負債となってのしかかってきます。その上、給与の上昇がないどころか、維持さえも保証されません。勤務弁護士は、いつ解雇されるとも限りません。実際、当初給与30万円という条件で雇われ、3ヶ月後には「来月から給与10万円にするから。」と一方的に宣告された若手弁護士もいます。弁護士はどれだけ働いても残業代もありません。勤務弁護士は、派遣社員と何ら変わりないのです。

 独立した場合、経営者弁護士は、事務所の固定経費として通常月額100万円前後を必要とする人が多いと思います。事務員を1人は雇わないといけませんし、事務員の給与のほか社会保険や事務所家賃等々がかかるからです。
 そして、仮に固定経費が100万円だとすると、月の売上げ月額100万円であったとしても変動経費は捻出できず赤字になります。当然弁護士の給料はでません。

  これに比較して、裁判官や検察官は、当初の給与こそ低額ですが、給与が必ず上昇しますし、高い共済年金や退職金もあります。有給休暇もありますし、人件費や事務所家賃等固定経費を支払う必要もありません。官舎の家賃も通常の家賃よりも3分の1から10分の1の低価格です。
 これらを考えると、裁判官や検察官の退職金は5000万円から8000万円程度ですから、年金や退職金を考えれば、在職40年とすると弁護士の年収が同年代の裁判官や検察官よりも200万円以上高くても裁判官や検察官の方が経済的にはるかに恵まれているのです。
 
 弁護士が裁判官や検察官よりも経済的に恵まれているというのは、一部の特殊な弁護士以外に当てはまりません。

 「ワーキングプアーロイヤーズ」という言葉が何故出てきたのか、最高裁は日弁連に質問状を出すまでもなく、実体調査をするまでもなく、少し考えればわかるでしょう。

 最高裁は、どうも裁判官自身がどれほど経済的に恵まれているかについて理解しておられないようです。

 裁判官の仕事は、自身が体験しない状況を想像力を働かせて事件解決にあたるのですから、この程度の想像力くらいあってしかるべきなのではないでしょうか。

pagetop