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2011.01.10
法曹志願者が激減しています。
昨年で廃止された旧司法試験志願者が激減するのは当然ですが、法科大学院を経由する新司法試験の志願者数も激減しています。
新司法試験志願者の激減する数を把握するためには、法科大学院を受験するために必要な適性試験の人数を図るのが最も手っ取り早いのですが、適性試験志願者数は、法科大学院が創設された平成15年当時の5万9393人をピークとして、その後減少の一途をたどり、平成22年には1万6469人とナント4分の1近くに激減しています。
ただし、この適性試験には、大学入試センターと日弁連法務研究財団の行う2種類の試験があり、そのどちらも受けることができるので、実際の志願者数はもっと少ないものと推測されます。
司法改革を始める際、「多様な給源から多様な人材を集めるために」との目的で司法試験制度を改革したはずです。なのに、もはや他の仕事を辞めてまで司法試験を目指す人はいなくなり、法曹を志す人自体が激減しているのです。
これは、何故でしょうか?
この点につき、激増論者は、「新司法試験の合格率が低いことが原因だ。だから、もっと司法試験合格者数を増やすことが急務。」と言います。
この主張に合理性はあるでしょうか?
結論から言うと、この主張には合理性が全くありません。
例えば、私達が司法試験に合格した当時、合格率は1%から2%でしたが、司法試験志願者数は今よりもはるかに多かったですし、司法試験受験者数はその後も毎年増えていました。
今の新司法試験合格率は48%から33%で、以前の合格率に比べたら、20倍以上も合格しやすくなっています。
にもかかわらず、司法改革以前と比較しても志願者数が減っているのですから「合格率が低いから志願者が減っている」わけでないことは、子供でも分かることです。
現在、弁護士としても頭角を現す有為な人材は、「もし、今みたいに合格率が高かったら、絶対に目指していなかった。」と皆口を揃えて言います。優秀な人は、司法試験が難しかったからこそ挑んでいたのではないでしょうか。
市民は「誰でも合格できるから司法試験を目指す」という人に弁護士になってもらいたくはないはずです。
また、以前は、小学校を卒業していなくても司法試験に合格しさえすれば、法曹になれたのに、今は、四年生大学を卒業した後、法科大学院まで出ないと新司法試験を受けられません。大学卒業後、2年から3年の法科大学院の入学金や授業料及び家族を養う経済的余裕のある人でなければ、目指すことができなくなっています。明らかな学歴差別・経済的差別が横行しているのです。
そのうえ、法学部出身者以外の未修者コースに入学しても、3年で法学部出身者と同等のレベルに達することは難しく、法科大学院卒業後5年間で3回しか受けられない司法試験に合格することは困難を極めます。
そのため、未修者コースは、既修者で埋め尽くされ、法曹への給源は益々門戸を狭められています。
他方で、弁護士の子息ら2世弁護士が急増しています。これまでの弁護士の子供であれば経済的問題はクリアできますし、就職先が見つからないなどというリスクも少ないからです。
そうです。
司法試験志願者数が激減しているのは、法科大学院に莫大な費用と時間を浪費するのに、司法試験に合格しても、その多くが弁護士としての就職先がなく、ワーキングプアーになることが世間に周知され始めたからに他なりません。
すなわち、司法試験志願者数が激減しているのは、1つは法科大学院を経なければ司法試験に合格できないということと弁護士になっても未来がないからの2つなのです。
莫大な投下資本を掛けてもそれを回収できないことがほぼ分かっているのに、誰が自分の人生を賭けて投資するというのでしょうか。
法曹志願者数を増やすためには、法科大学院制度を廃止し、司法試験に合格しさえすれば一応の就職先がある程度の人数に合格者数を絞ることです。
違うというのなら、一度実験をしてみればすぐに分かります。
法科大学院制度→新司法試験制度が破綻したことはこの10年間でもう実証されているのですから。
ちなみに、司法制度改革は、その手段が目的に逆行していること、制度改革は逆効果であることは、10年以上も前から私達が盛んに主張していたことです。そして、このように私達の主張することが理論的に正しいことが、この10年間で、実証的に証明されました。
なのに、一向に私達の言うことに耳を貸さない増員論者には一刻も早く退場していただきたいのですが、一番大きな顔で要職から離れようとしないのですから、本当に始末におえません。