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2011.01.18
弁護士激増派の根拠は次々と統計上理由がないことが明らかとなり、その都度、弁護士激増派の根拠は変遷します。
例えば、「弁護士に対する需要は企業や官庁にいくらでもある。」という根拠は、その後、企業内弁護士等がさして増加せず、弁護士登録自体できない人が激増していること、それどころか企業や官庁に対するアンケートによって企業や官庁が弁護士を求めていないことが明確となり、何度も打ち砕かれました。
「司法過疎解消のために弁護士を増員しなければならない。」という根拠も、司法過疎が数年もしないうちに解消されて、もはや論拠を失いました。今や、地方での弁護士過剰時代が顕在化しつつあります。
その他「裁判に訴えたくても弁護士が身近にいないので、泣き寝入りを強いられている人が大勢いる。」という根拠は、弁護士を増やしても事件数がさほど増えないこと、弁護士委任率がむしろ低下していることからして、説得力を失っています。
「被疑者国選の担い手のためには弁護士増が必要。」という根拠も、現在の弁護士数でもどこの弁護士でも対応できており、「弁護士数が少ないから被疑者国選を実施できない。」との声はどこからもあがってはおらず、理由がないことが明らかです。
さて、最近は、どのようなことが言われ始めているかというと、「弁護士数を増やさなければ国際競争に勝てない。」「弁護士が国際的な場面で活躍できる場が沢山ある。」という「国際競争論」とでも言うべき根拠が持ち出されるようになりました。
弁護士激増の根拠が打ち消されても打ち消されても、次から次へ根拠付けを見つけて来る執念は褒めて差し上げるべきかもしれません。
弁護士激増派の人達は、とにもかくにも先に「激増」の結論ありきで、根拠が不合理であることが明々白々なのですが、はてさてこの国際競争論には理由があるでしょうか。
答えは、ノーです。
この根拠にも理由がないと思います。
考えても見て下さい。テルモピュライの戦い(圧倒的少数のスパルタ兵が地形を利用して善戦したが、結局は負けてしまった)ではありませんが、槍や鉄砲で行われていた時代の戦争ならば、兵士の数で勝ち負けが決まることはあったかもしれません。しかし、今では、戦争でさえ、兵士の数で勝ち負けが決まるわけではありません。
弁護士を増やしたからといって、国際競争力が高まるとの論理的筋道がさっぱりわかりません。
そもそも弁護士が戦力となるべき国際競争の場面とは、具体的に何を指して言っているのかがわかりません。
例えば、各商業界のビジネス戦争のことを言っているのでしょうか。その場合、当該商業に門外漢の弁護士が大した戦力になるとは思われません。弁護士が出ていってどうやって弁護士が戦うというのでしょうか。仮に、そのような場面があるとして、そこで一番大切なのは、「数」ではなく「質」の方なのではないでしょうか。
また、そのような需要があるのであれば、既に国際的な場面でもっと多くの弁護士が活躍しているでしょう。
私が行く東京のお寿司屋さんの店員は、皆英語が堪能です。
アメリカ人や中国人のお客さんがあまりに多いので、お店の休みの日にネイティブの英語教師を招き、皆で勉強しているそうです。私が「皆さん。英語がお上手ですね。」と申しあげると、そのお寿司屋さんは、照れながら「私の中学の英語の先生が見たら、きっとビックリしますよ。」と笑っておられました。
ケインズの有効需要の原理ではないですが、兵庫県弁護士会の会員集会でいみじくも「供給は需要を産まない。」と言われた会員がいました。
そうです。繰り返しますが、国際的な場面で弁護士が本当に必要とされているのであれば、行き場のない弁護士のはけ口としてではなく、既に弁護士がその場に積極的に出向き活動しているはずなのです。
ところが、今の状況は、日弁連が各方面に弁護士の雇用を必死でお願いして、やっと雇い入れてもらっているような状況で、順序が逆となっています。
激増派の人には、本当にもう少し誠実な議論をお願いしたいと思います。