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2011.02.11
先週、千葉県弁護士会で、司法試験合格者1000人以下及び受験回数制限撤廃を求める決議が圧倒的多数で可決されたそうです。千葉県弁護士会は、私が3年程前に法曹人口問題について、会員に対して講演をさせて戴いた弁護士会ですので、うれしさも格別です。
私も全文は未だ読んでいないのですが、昨年12月の弁護士一括登録日に弁護士登録しなかった人が258名にも上るのですから、「司法試験合格者数を1000人以下にすべき」と求めるのは、きわめて合理的行動であると言えます。
このように言うと必ず激増派弁護士や激増派マスコミは、「弁護士になったからといって食べられると考えること自体が甘い。」「就職難は、弁護士だけではない。」などといった反論をしてきます。
しかし、これら反論には合理性がありません。
なぜなら、弁護士の就職難を言う時、私達が問題にしているのは、弁護士の経済的問題というよりも、むしろ就職難=オンザジョブトレーニングの欠如による質の低下だからです。また、私達が問題にしているのは、破産できない弁護士が赤字経営や生活苦に追い込まれることよる弁護士の質の低下だからです。後者の問題は、何も若手弁護士に限られるものではありません。中堅以上の弁護士の質の低下をも意味します。そして、後者の具体例としては、濫訴だけではありません。弁護士が赤字経営の補填や借金返済に汲汲として依頼者市民の人権を考える余裕がなくなり、儲けの少ない大変な事件を受ける余裕がなくなることや弁護士費用の高騰等々様々な形で現れます。
前にも申しあげましたが、過払案件を除く全体の事件数は減っているのに、逆に言いがかり訴訟は急増しています。現に、私自身言いがかり訴訟を提起された被告の代理人を何件も手がけています。
言いがかり訴訟を提起された依頼者はたまったものではありません。しかし、裁判では、応答しないと負けてしまいますし、何が起こるか分かりません。裁判官が合理的な判決を書いてくれるとは限りません。
そのため、言いがかり訴訟を受けて立たざるを得なくなった依頼者市民は、どれほどの費用と時間、労力と精神的負担に苦しんでいることでしょう。
弁護士は、医師と同じく直接人の人権を切り刻む職業です。
どんな人でも弁護士にならせて、生活できない弁護士を大量に作ったら、結局、それによる弊害を被るのは市民なのです。
四年生大学を出た学生が就職先がなくても依頼者市民の人権が侵害される危険性は少ないですが、弁護士が就職先がないことによる弊害は、比較にならない程甚大です。
こんなことは、弁護士を少しでもすれば分かることであるのに、かつ、これほどまでに弊害が顕著になりつつあるのに、激増路線の舵を切ろうとしない人の人権感覚を疑います。
※2月26日午後1時から兵庫県弁護士会本館4階講堂で法曹人口問題についての市民シンポが開かれます。事前申込み不要。参加費無料です。多数の方のご来場をお待ち申しあげております。