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2011.02.15
弁護士の質といっても様々な議論があり、一言では到底言い尽くすことはできません。ただ、私は、「弁護士の質」という時、最低限の法律的知識とリーガルマインドが備わっていることが当然の前提としてあると思っています。
「リーガルマインド」という言葉にピンと来ない方もいらっしゃると思うのですが、リーガルマインドとは、特殊な法律知識がなくても、その法律解釈の筋道がほぼ判断でき、どのような事案でもほぼ正解にたどり着くことのできる、法的精神とでも訳したらよいでしょうか。
「リーガルマインド」が身についていれば、大抵どのような事案でも対応することができます。
「何がご専門ですか。」と聞かれることがあります。弁護士の場合、渉外・企業法務・その他程度には分けることができるかも知れません。が、「その他」を扱う私たち『町弁』は、医師のように専門分野に別れていて他の分野に対応できないということはあまり多くはないと思います。
「リーガルマインド」は、多分に法律的な感覚といったもので、筋の良い人は、いとも簡単に身につけることができるのですが、筋の悪い人にとっては、かなりの努力が必要です。ただ、このリーガルマインドは、どんなに筋の悪い人であっても、法律的知識や法的問題を読み解く訓練をたくさん積みさえすれば、知らず知らずのうちにいつかは身につけることができます。逆に言えば、リーガルマインドを身につけるには、かなりの法律的知識の裏付けがなければなりませんでした。
私達が受験生だった当時は、このリーガルマインドが身につけば合格できると言われていました。
司法改革により、合格者数を激増させた結果、合格者にこの最低限の法律知識とリーガルマインドが必ずしも備わっていないのではないかという懸念が問題にされるようになってきました。
ただ、弁護士を激増させたことにより、もっと深刻なのは、このような意味での「弁護士の質」だけでなく、むしろ赤字経営・経営難による中堅以上の「弁護士の質」の低下だと思っています。
言いがかり訴訟が急増していますが、この言いがかり訴訟のほとんどが、このような経営難に追い込まれた中堅以上の弁護士によるものであるように見えます。
司法改革により、「玉石混淆の弁護士から自分の目と自分の責任で良い弁護士を選びなさい、それにより不利益を受けても仕方ないでしょう。」というのは、あまりにも市民への負担が大きすぎます。裁判を起こす、或いは、起こされる当事者からすれば、一生や人の尊厳がかかっているわけですから。それだけでなく、裁判の当事者の負担する労力・時間・費用・精神的負担たるや、筆舌に尽くしがたいものがあります。
あらゆる意味で司法改革は失敗であったと結論づけることができるのですが、未だ舵を反対に切ろうとしないのですから、本当に困ったものです。
※2月26日(土)午後1時~兵庫県弁護士会本館講堂で「弁護士大増員時代に見えてくる私達の暮らしの未来を語り合おう。」という市民シンポが行われます。事前申込み不要、参加費無料です。多くの市民の皆様のご来場をお待ち申しあげております。