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2011.03.23
前にも説明したかとは思うのですが、ご存知ない方のために、もう一度、司法改革により法曹養成制度がどのように変わったかを少し説明させて戴きます。
司法改革により、新司法試験に合格するには、四年大学を卒業した後、改めて2年ないし3年の法科大学院を卒業しなければならなくなりました。
また、以前は年間500人であった司法試験合格者数を年間2000人に増やすに従い、司法試験合格後に行う研修(「司法修習」と言います。)を2年から1年半へ、1年半から1年に次々と期間を短縮しました。
弁護士資格が取れるのは、この司法修習期間を終えて卒業試験(「二回試験」と言います。)に合格した人だけです。
そして、通常は、弁護士資格を取得してからも、どこかの法律事務所に勤務し、そこで、先輩弁護士(「ボス弁」あるいは、「兄弁」と言います。)に仕事の仕方等を教えてもらい、大体3年から5年で一人前になるとされていました。
弁護士の仕事は、職人と同じく、机上の勉強で身につくものではありません。やはり実際の事件に携わり、責任と自覚を持って数年間鍛えられることによりはじめて一人前になると言われています。
ところが、需要をはるかに超えた供給(司法試験合格者数)を排出し続けたことから、弁護士資格を取得した後の就職先がなくなりました。そのため、弁護士資格を取得して直ちに開業をする即独(=即時開業弁護士)、ノキ弁(事務所には入るが、仕事や給料をもらえるわけではなく単に机を置かせてもらえるだけの軒先だけ借りる弁護士)といった資格取得後に鍛えられる機会のない弁護士が増えてきました。
今回、日弁連執行部が出そうとしている緊急提言は、新司法試験に合格する前の法科大学院に対する意見です。そして、日弁連執行部が守ろうとしている法科大学院は何一つ取柄のない制度です。
まず、第一に、お金が非常にかかります。経済的差別の問題です。
安い法科大学院の授業料で年間80万円程度で、多いところになると年間150万円をはるかに超えるところもあります。入学金は当然別立てです。そのほかに生活費がかかります。
四年大学までの授業料や生活費は、親に援助してもらえたとしても、普通就職すべき年齢で親の支援に頼るのは忍びないという多くの人は、必然的に借金をして学費や生活費をまかなうことになります。
その結果、司法試験に合格するまでに、800万円、900万円の借金を抱えざるを得なくなった人が数多く存在します。私が伺ったところでは、司法試験に合格するまでに、1400万円あるいは1500万円の借金を抱えてい人もいました。
その上、就職先もないですし、仮に就職先があったとしても、劣悪な労働条件で働かされるのが『オチ』ですので、当然、お金持ちか、就職先の心配のない二世弁護士しか法曹を目指せなくなります。
次の問題は、法科大学院が学歴差別を司法試験にもたらすことです。
法科大学院は、あくまで「大学院」ですので、四年大学を卒業した人でなければ法科大学院を受験できなくなります。
法科大学院の制度ができるまでは、司法試験にさえ合格すれば、どんな学歴であっても、どんな経歴であっても弁護士になることができました。極端に言えば、小学校を出ていなくても法曹になることができたのです。
このように、司法試験は、司法改革が始まるまで、学歴社会の一発逆転的要素を持っていました。
しかし、司法改革で法科大学院を卒業しなければならなくなったことにより、高学歴の人しか法曹になれなくなりました。
司法改革は、格差社会を広げるに十分な役割を果たしたと言えるでしょう。
でも、問題はそれだけではありませんでした。
<続く・・・>