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法科大学院の弊害

2011.03.25

 

 法科大学院の弊害は、これまで述べたものに限られません。
  
 さらに、法科大学院が抱える問題としては、法科大学院も大学の機関である以上、文部科学省の支配・監督下に置かれるということです。
 文部科学省は、大学の人事とお金を握っているので、大学との関係では絶大なる権限を持っています。そのため、大学が文部科学省の言うことに逆らうことなど到底不可能です。
 法科大学院の改革と司法研修所の改革とで、どちらが容易いかは申し上げるまでもありません。
 また、法科大学院は、あくまでも大学の組織の中にありますので、弁護士会がその運営に正式に関与できるわけではありません。
 私は司法研修所の教育が万能だったと申し上げるつもりはありません。しかし、改革をするにしても、司法研修所の場合、実質的には最高裁判所の運営ではあっても、形式的には弁護士会も関与していますし、実質的にも法科大学院と比べてまだ弁護士会が正式に関与できる余地がありました。
 しかし、法科大学院の改革には弁護士会は、外野で意見を言うことはできても、実際に大学の中に入って改革論議に参加することさえ、ほとんどできないのです。
 
 各大学は、皆法科大学院のために数十億の予算を使っており、法科大学院の司法試験合格率が大学の存立を決めるほどの影響力を持つために大学の予算や人事がもっぱら法科大学院に集中させられています。
 そのため、法学部の人事・教育の空洞化、すなわち、学部自体のレベル低下も起きています。
 更に言えば、法学部の教授陣は、学部生の教育、これまでの大学院生の指導に加えて法科大学院生の教育その他雑務が重くのしかかり、研究をする余力がないため大学の研究レベルの低下は著しいものがあります。
 また、大学のお金が法科大学院に集中するため、これまで他学部へ回っていた予算が削られ、他学部の研究レベル低下も問題になっています。

 法曹養成の問題で言えば、一番の問題は、法科大学院の授業のあり方です。
 もともと研究をもっぱら行っていた教授陣が法科大学院の教育に携わるわけですが、法科大学院の授業だからといって、急に授業が上手くなるわけではありません。また、本来、教授陣は、自分の学説や興味のある分野を深く掘り下げて教育できていたのですが、それでは司法試験には合格できません。そこで、大学の教授陣が予備校講師のようになるか、学生が法科大学院とは別に司法試験受験予備校に通うかどちらかに進まざるを得ません。
 
 法科大学院を設立するに際して、「予備校へ学生が行かないように。」と予備校の弊害を持ち出す人がいましたが、法科大学院が設立されて最も喜んでいるのは予備校だと言われています。
 なぜなら、予備校は、法科大学院の受験で儲け、司法試験の受験で儲けることができるからです。同じ学生が2度も予備校に来てくれるのですから、「一粒で二度美味しい」とはこのことでしょう。
 このようなことも法科大学院制度が始まる前からわかっていたことで、私を含め皆指摘していました。

 間違っていることでも強引に進めるというのが、この司法改革の特徴でもあります。

 そして、その傾向は今でも続いています。。。

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