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法曹人口問題に関する国際フォーラム(2)

2011.05.09

 

 国際フォーラムでは、中国と韓国の弁護士及びマレーシアの裁判官もパネルディスカッションの発言者でした。
 
 不思議だったのは、どのパネリストも、「弁護士人口が急激に増えたことにより、プラス面よりもマイナス面の方が大きく、そちらの方を強調したい」としながらも、具体的なマイナス面には皆さん一様に口をつぐんでいたことです。

 一応、マイナス面として少しだけ発言の中で出ていたのは、弁護士の質を担保するための修練の場を確保することの困難さと過当競争による弁護士の質の低下でした。

 そして、中国では、現在、20万人の弁護士がいるそうで、未だ人口比で国民7000人に1人の割合でしかなく、「弁護士が足りない」とのことでした。また、中国では、法曹界でもグローバル化しており、外国弁護士の活躍が増えているそうです。
 他方で、中国でも大規模な取引以外の場面で弁護士が必要とされる事例は少なく、「社会で弁護士が活用されていない」と表現されていました。
 また、最後に、「弁護士を活用するチャンスを創出していく必要がある。」との結びを言われていたことからしても、中国での弁護士不足は実はたいしたことなく、弁護士過疎地等一部の局面を指して言われているのではないかと思われました。
 ちなみに、中国では、弁護士過疎が激しいらしく、「200県で弁護士が存在しない(!)」とのことでした。

 マレーシアの裁判官も、「まだまだ弁護士の数は足りない」と言われていましたが、「訴訟を担当する弁護士がいない。」ということで、どうも日本と同じくマレーシアでも訴訟を担当する弁護士は収入が低いらしく、マレーシアの場合は、訴訟を担当しない、収入の高い分野にばかり弁護士が集まっているようでした。

 日本と韓国では、既に弁護士が溢れ過ぎていることが明白で、オーストラリア人の司会者から「日本と韓国では、増えすぎた弁護士を吸収できないということではないか。」と質問されていましたが、2人ともこの質問に真正面から答えるようなことはありませんでした。 
 ここは明確に回答して戴きたかったので、大変残念でした。

 宇都宮会長は、司法修習生の貸与制の問題を強調されていましたが、他のパネリスト及び聴取者は、あまりピンと来ていないように見えました。

 なお、全てのパネリストが話題にしていたのは、グローバル化で、韓国ではロースクールの試験で高度な英語力が試され、授業も英語で行われるそうで、英語に対するプレッシャーで4人の学生が自殺した例を挙げておられました。
 また、韓国では、自国の弁護士に依頼するよりも欧米の弁護士に依頼することの方が多いらしく、これは韓国経済が破綻したことにより、アメリカ資本が韓国経済を支配していることの証左にほかなりません。

 日本人には、英語コンプレックスがあり、宇都宮会長も「私が韓国人なら弁護士になれていなかっただろう。」などといったジョークを飛ばしておられましたが、渉外弁護士は別として弁護士が英語などできる必要は全くないと思います。

 英語は単なるコミュニケーションのツールでしかありません。

 私たちの国で英語が公用語になっていないことの意味をもっと考えるべきです。
 
 年次改革要望書では、日本のADRで英語を使えるようにすべき、その場合は、弁護士の説明責任のハードルを下げるべき(依頼者等が理解していなくても弁護士が責任を問われないようにする)との要望がわかりにくい体裁で織り込まれてました。
 それが実現していたとすれば、それは日本のアメリカによる実質的植民地化が完成したことを意味するのに他なりません。

 「グローバル化」という耳心地の良い言葉に惑わされて、「飛んで火に入る夏の虫」といったことにならないよう、注意する必要があると思います。

 もう既に「時既に遅し」かも知れませんが・・・・。

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