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2011.06.22
「弁護士を増やして弁護士としての就職先がなくても、企業に入ってもらい、コンプライアンスの感覚を企業内部から浸透させてもらえれば良い。」と言われる弁護士がいます。
私は、この言葉を聞くと違和感を感じます。
何故弁護士資格を持った人が企業に入れば、企業のコンプライアンスが高まると言えるのでしょうか。
今でも法学部で法律を勉強した人達が企業に入って法務部で沢山活躍しています。
その上更に、弁護士資格を持った人が企業に入らなければならない必要性がどこにあるのでしょうか。
ちなみに、「コンプライアンス」とは、英語の直訳では「法令遵守」と言う意味になりますが、日本で使われる場合は、法令遵守のみならず、(企業)倫理の遵守を含めた概念として使われています。
一般の人と比較して、弁護士の方が倫理観において劣っていると感じることも多いです。
その理由は、おそらく弁護士が常に「法律に反するか否か。」と言う最低の倫理たる法律の世界で日常暮らしているせいではないかと思っています。
一般社会では、ここまで卑劣なことをしていれば社会から駆逐されるべきといった人物が、弁護士会では許されるどころか、むしろ役員等になって平会員よりも大きな顔で、より大きな声で発言をしていることが散見されます。
私には、弁護士資格を持った人が企業に入れば、企業のコンプライアンスが高まるとの結論がいかにして論理必然的に導かれるのか、その論理的筋道が分かりません。
企業内に入り、企業のコンプライアンス経営に尽力されている弁護士の存在を否定するつもりは毛頭ありません。
しかしながら、それは弁護士資格を持っているか否かとは関係のないことだと思います。
前述の通り、弁護士資格を持たない企業人であっても、コンプライアンス経営に尽力されている人も沢山存在するのです。
もし、法曹資格を持たない法務部の人の法律的知識が足りないと言うのならば、法科大学院まで行かなくとも法学部の勉強のレベルを上げれば済む問題です。
企業内に弁護士が入らなければ、企業はコンプライアンス経営ができないというのは、一般の企業人を見下した議論につながりかねないのではないでしょうか。
仮に、弁護士資格を持った人間の方が一般の人よりもコンプライアンス感覚に勝っているとしましょう。
それでも、会社から給与をもらい、会社から首になれば他に就職先もなく、会社に逆らったら明日から家族が路頭に迷う。そんな立場で、どこまで自分の意見を押し通すことができるというのでしょうか。勿論、自分の家族を路頭に迷わせる結果になっても正しいと思う自分の意見を言い続ける人も中には存在します。しかし、そのような奇特な方は必ずしも多くはないでしょう。
顧問弁護士の場合ならば、企業に苦言を呈して顧問先から顧問契約を打ち切られても直ちに生活に困ると言うことはありません。
顧問弁護士だからこそ、企業にとって耳の痛い意見でも言うことができるということもあるのです。
このように、企業内に弁護士が入らないと企業のコンプライアンス経営が成り立たないと言うことは理論必然ではないのではないでしょうか。
弁護士資格は、とても危険な資格です。
弁護士資格は、人の人権を直接切り刻める、その意味で医師と同様の資格です。
弁護士を増やすと言うのは、誰にでも医師免許を渡して、誰でもが医師として手術できるようにすべきと言うのと同じです。
そして、(企業内)弁護士を増やせば世の中良くなるというような意見を少なくとも弁護士自らが言うべきではないと私は思います。
そのようなことを言っていたのでは、市民からの理解は得られないでしょう。