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2011.07.17
「法曹養成フォーラムの有識者は『(司法修習生の)貸与制支持が大勢』」とのニュースが流れました。
「貸与制にしてしまったのでは、お金持ちしか法曹になれない。」との日弁連のキャンペーンは完全敗北の様相を呈しています。
このキャンペーンは、一面真実です。
「貸与制」或いは法科大学院制度であったならば、司法試験など受けていなかったという弁護士の方がむしろ多いでしょう。
ただ、本来的な問題点はそこではありませんでした。
本来的な問題は、修習生という将来法曹になるのがほぼ確実である人を育てるのに、税金を投入すべきか否かということだったのです。
法曹は、裁判官にしても検察官にしても弁護士にしても、医師と同様に直接人権を切り刻む専門性や危険性の高い職業です。
人の人生を左右することさえあります。
その権利の護り手は、国が責任を持って育てるべきではないかということです。
制度は人が動かすものです。人材を育てることが一番重要です。
水岡俊一参議院議員は、当会のフォーラムで「私は教師をしていました。大学時代に奨学金を受けても、教師を10年間していると奨学金を返さなくて良くなる制度があります。教師という教育に携わる大切な人材を育てるのに国がお金を出すのは、その職業の重要性からして当然のことです。国には人材を育てる責務があります。」と言われました。
本当にその通りだと思います。
国が税金を出して人材を育てているのは、法曹だけではありません。
医師もそうです。旧国立大学の学生も恩恵を受けています。
この点、「金持ちしか法曹になれない。」という切り口だと「弁護士は儲けているのだから、その法曹になるためにお金がかかるのは当たり前。」という社会のイメージにより簡単に潰されてしまいます。
司法修習生に給与を支払うか否かというのは、法曹養成のあり方の問題です。
前述したように、司法試験を受ける前段階の法科大学院を卒業して司法試験に合格するまでの間に生活費と学費で、人によれば、1000万円を優に超える負債を負うこともあります。税金も法科大学院関連で200億円から250億円を超える公費が投入されているようです。
このように、当事者にしても税金にしても、お金のかかるのは法科大学院の方なのに、法科大学院制度の存続を前提として司法修習生の経済的問題を問いかけても説得力はないでしょう。
司法修習生の貸与制の問題は、法科大学院制度を廃止することとセットで言わなければ意味がないですし、説得力を持つはずがありません。
弁護士が司法修習生の給費制維持のために頑張るのは、自分の利害関係で言っているわけでありません。弁護士資格を取得している以上、再び司法修習生になる可能性は、ほとんどないでしょう。
これは、法曹人口問題でも同じことです。
弁護士が活動しているのは、司法制度を一番良く知る弁護士が市民にとって司法制度としてどうあるべきかということを世間に問うているのです。
「お金持ちしか法曹になれない」とのキャンペーンはわかりやすく、短いスパンで訴えかけるのには効果があると思われたのですが、わかりやすくすれば良いというわけでないことを私たちは学びました。
これからは、やはり理論的に正しいことを本質論に遡って主張していく運動を展開すべきだと思います。