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2011.07.18
司法修習生の給費制を維持する運動のために、弁護士が署名活動やシンポジウム開催をしてきたのは、これが我が国の司法制度や市民にとって必要不可欠な制度であると確信しているからです。
私もカンパは勿論のこと、ビラ配りやシンポジウム参加等できる限りの協力をしてきましたし、77歳になる父も老体にむち打ってビラ配りをしました。そのような活動は、私達だけではありません。全国各地で多くの弁護士が業務時間を削って司法修習生の給費制維持に尽力しています。
先日も申し上げた通り、司法修習生の給費制が廃止されようと維持されようと、既に弁護士になっている人には関係がありません。
それなのに、何故弁護士が業務時間を削ってまで給費制維持活動に心血を注いでいるかというとを考えて戴きたいと思います。
それは、私達弁護士が給費制の大切さや重要性を誰よりも一番良くわかっているからです。給費制が司法制度、ひいては市民にとって重要な制度であることを実感としてわかっているからなのです。
3年前の兵庫県弁護士会の法曹人口の市民シンポジウムで、マスコミの方が「私はその職業の社会的価値は、本質的営業的な業務ではなく、非本質的業務と言いましょうか、ボランティア的活動によって決まると思います。弁護士会は、自分達の利害とは関係なく、これまで社会にとって正しいと思われることを発言し、活動してきました。だからこそ、弁護士は市民からの厚い信頼が得られているのです。弁護士の経済的基盤が弱体化し、精神的・経済的余裕がなくなれば、その非本質的な業務に支障を来します。それはマスコミも同じことです。マスコミが広告主探しに苦労し、経済的余裕がなくなれば、広告主に気を使い正しい報道ができなくなる危険があります。果たして、そのような社会になって本当に良いのでしょうか。」といった趣旨のことを発言されました。
私達弁護士が経済的余裕がなくなりつつある状況の中で、ボランティア的活動を行い続ける努力をしている、その原点は、やはり給費制にあることは否定できないでしょう。
司法修習生の時に国から給与をもらい、修行させてもらいながら、公益的なボランティア的活動を怠るのは、良心に悖ります。そのため、歯を食いしばって公益的なボランティア的活動を行うのですが、これが貸与制になってしまえば、弁護士が公益的ボランティア的活動を行う重要なインセンティブが欠落してしまいます。弁護士の存在意義もいずれ失われるでしょう。
弁護士の存在意義が失われるだけなら良いのですが、そうなれば、利害に関係なく、人権を擁護し、社会正義を実現するための発言や活動を行う存在が消え去ることになりかねません。勿論、そのような存在は弁護士会だけであったというつもりはありません。司法改革に限らず、弁護士会の発言が常に正しかったわけでもありません。
でも、弁護士会が社会や政治にもの申す、その重要な担い手の一勢力であったことは否定できないと思います。
弁護士が歯を食いしばるにしても、いずれ限界が確実に来るのも目に見えています。
司法修習生の給費制維持は、誰が何と言おうと、維持すべきであると思います。