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2011.08.08
8月4日付け時事通信の報道によると、「政府は」「司法修習生」の「給費制」を打ち切り」「「貸与制」に移行する方針を確認」したそうです。「8月末に」「正式に決定する」とのことです。
給費制は、法曹についての人材をどのように育成するかが問題の根幹をなします。
給費制の問題は、法曹三者、すなわち、裁判官・検察官・弁護士を誰がどのように育成するかという問題です。
給費制の維持は、この法曹三者の教育を国が費用等を出して責任を持って育てるべきことを意味します。
人材が国の行く末を決めます。
制度がどれほど良くてもそれを動かす人の質が悪ければ、上手く機能しません。
そして、人材育成に国の税金が投与されているのは、何も法曹三者だけではありません。
例えば、旧国立大学の学費が安かったのも税金が投与されているからですし、給費制とは金額的に比較にならないほどの莫大な費用が(私立の法科大学院を含めて)法科大学院制度のために投与されています。
教育大学で奨学金を受けても、10年間(大学によって違うのかもしれません)学校の教員をしていれば奨学金が免除されますし、その他同様なことは法曹以外の人材育成でも散見されます。
また、司法制度は三権分立の一翼を担っています。
「三権分立」の「三権」とは、ご承知の通り、立法・行政・司法からなります。
そして、立法・行政の場合、最終的には国民の多数決で施策の方向性が決められます。
すなわち、立法・行政は、多数決によって人権救済や社会正義実現のための制度基盤を整わせる役目を本来的に負っています。
ところが、立法や行政の多数決支配では、どうしても少数派の人権はないがしろにされかねません。なぜなら、「こちらを立てれば、あちらが立たず」といった事態がどうしても生じてしまうからです。そして、多数決でこぼれ落ちた人権を事後的、個別に救済するのが司法の役目です。
このように、司法は、立法や行政といった多数決支配の国家機関の補完的役割を果たす重要な役目を負っています。
そのために、司法は、多数決によって影響を受けないことが求められます。
裁判官の独立が憲法で保障され、弁護士に自治が認められ、他の監督を受けないとされているのも、多数決支配からの独立が求められる司法としての役割を果たすために必要不可欠だからではないでしょうか。
その意味で弁護士というのは、民間ではありますが、業務を尽くす過程そのものが社会の中で公的な役割を一面果たしているとも評価できるのです。
裁判官や検察官を公費で育てる必要性は、弁護士にも十分当てはまるはずです。
弁護士がアクションを起こさなければ、司法そのものがどんなに良い制度であっても、国民に使われようがありません。
よって、国民の税金を投入してでも、責任を持って弁護士を育てるのは、国の責務でもあると言えるのではないでしょうか。
「弁護士は民間だから、教育も全て自分のお金で行うべき」と言ってしまうと、益々法曹に有意な人材は集まらず、人権救済の最後の砦は、「砦」としての機能を果たさなくなってしまいます。
私たち弁護士が「割に合わない」ボランティア的公益活動をし続ける、その原点は給費制にあります。
弁護士の非営業的、公益的活動の果たすべき役割の重要性は、営業的活動の比ではありません。
国民にとって、本当にそのような社会になるのが望ましいといえるのでしょうか、というのが給費制の是非を決する問いだと思います。
政府に対して、今一度給費制維持の検討を求めたいと思います。