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2011.09.04
先日、某会合で関西学院大学の鈴木謙介準教授による「若者と労働」というテーマの講義を受けました。
鈴木先生の専門は社会学ですが、お話の内容は弁護士の世界にも十分通じる内容で大変興味深いものでした。
例えば、一般社会の中でも不景気な時に就職した若者ほど離職しやすい傾向にあり長期的に離職率は上昇しているそうです。これは弁護士にも全く当てはまります。以前は、就職した事務所を出るのは5年ほどして独立する時、というのがほとんどでした。ところが、最近は、1年も経たないのに独立する弁護士や独立するわけではないのに、事務所から事務所へ転々と移動する弁護士も増えており、若手弁護士の流動性は近年きわめて高まっています。
また、一般社会の中で人口減少と大学進学率の増加に伴い、競争よりも自己実現の方が前面に出てきており、「仕事は生活の手段」ではなく「仕事を通じて夢を叶える」との目的に変化してきているそうです。
他方で、雇用する側は、雇用条件の悪さを覆い隠して、従業員にひたすらサービス向上に努めてもらうために、「夢を叶える」との若者のモチベーションをくすぐり、「お客様への奉仕」を職場の目標にして実践させるのだそうです。また、従業員に不断の反省を課して「職場の目標を達成しない自分が悪い」と思わせるのだそうです。そして、雇用主は、若者に昇級昇進の機会を与えずにおいて、「独立」」など遠くて抽象的な目標を持たせるそうです。
ところが、この手の手法を批判することは、従業員の「働く理由」自体を奪うことにつながりかねず、批判することを許されない。そして、企業の利益追求のために従業員は益々過剰動員をさせられ、結果としてサービスの質や安全性そのものに悪影響を与えることになるそうです。
これはまさに弁護士の姿ではないですか。
若手弁護士は、どんなに悪い環境であっても「我々は先輩弁護士のような贅沢は望みません。人権活動ができるだけでも幸せです。」と言わせられ、公益活動等で身も心もボロボロにさせられています。このままでは、サービスの質自体に悪影響を及ぼすことになりかねません。
他方で、我々が司法改悪を批判すると、「このような純粋な若手弁護士の夢や希望を何と心得ているのか。」などといった情緒的な言いがかりをつけられ、言論を封殺されるのです。
「このような卑劣な手法に屈してはいけない」
あらためて心に誓えた講義でした。
鈴木先生大変ためになる講義を有り難うございました。