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2011.10.10
先日、私の最新情報を読んで戴いている読者の方から下記メールを頂戴しました。
「私は長年勤務先で営業を担当してきました。若い者に常々申しているのはマーケテイングがすべてということなのです。要するに需要がすべてなんですね。」「宣伝で需要を喚起なんてなことを安易に言いますが、簡単にいくようであれば、こんな楽なことはありません。」「それでは、需要測定はどうするのか。厳密な調査でしょう。」「そう考えると、司法試験の世界は不思議な世界で、新制度にするのにマーケテイング調査はどこまでしたのか。最初から供給が先で、出発したとしか思えないのですがね。」
「需要のないところに供給なし」とのご指摘の通りです。
弁護士に対する需要がないところに過剰供給をしているのが現在の司法改革です。
ただし、司法改革を進めた平成12年頃、全く市場調査をしていなかったといえば、そうではありません。
司法制度改革審議会は市民に対する弁護士のニーズを調査すべく利用者調査を行っていました(http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/tyousa/2001/survey-report.html)。
ところが、司法改革審議会が行った利用者調査では、弁護士に対する需要があることは証明できませんでした。弁護士を探すのに、「困った」という人は1割にも満たなかったのです。当時は、今のように電車のつり革広告やテレビ広告、或いは、インターネット上での情報は全くなく、電話帳に弁護士事務所の電話番号を載せている人がほとんどいませんでした。ところが、市民の大半が知り合いの伝や弁護士会を通じて弁護士に容易にたどり着くことが出来ていることが統計上証明されてしまいました。
しかも、弁護士を利用した市民が弁護士に依頼した時期も、被告を含め訴訟前までに弁護士に依頼した人が8割程度に達していました。
そのため、調査結果では渋々ながらも「弁護士への大きなアクセス障害を直接示すものではなかった。今回の結果は、「知っている弁護士」が身近にいる、あるいは「顧問弁護士がいる」ということが、いわば司法への呼び水になっている」とのまとめを書かざるを得ないほど、弁護士を増やしたい人たちにとっては惨憺たる結果だったのです。
また、司法制度改革審議会の利用者調査では、弁護士の敷居の高さも証明できませんでした。弁護士を利用している市民の弁護士に対する満足度はかなり高いものでした。これに対し、裁判官に対する市民の満足度は弁護士と比べて比較的低いものでした。
すなわち、司法改革を進めるにあたって、実際には、マーケティング調査をした結果、弁護士を増やすべきとの需要がないことが統計上証明されたのに、弁護士を激増させたというのが今回の司法改革です。
繰り返しますが、「需要のないところに供給なし」です。
今回の弁護士激増は、需要がないことをわかっていて、敢えて弁護士を激増させたのですから、弁護士が溢れかえるのは、当然のことなのです。
自分たちの都合の悪い統計は無視して、統計結果とは逆の方向で強引に進めたのです。
「マーケティング調査をしていなかった」とのご意見は好意的な見方で、実は、もっと悪質な進め方だったのでした。