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「点からプロセス」の法曹養成制度?

2011.11.08

 

 法科大学院制度を中核とした新法曹養成制度を拝見していると、法科大学院制度導入の必要性が益々何だかわからなくなってきてしまいます。

 先日申しあげたとおり、法科大学院の理念が統計上いずれも妥当しないことは明らかです。
 
 その他法科大学院制度導入のスローガンとして言われていたのは、「点からプロセスによる法曹養成制度へ」ということでしたが、これも全く妥当しないのです。
 なぜなら、もともと旧司法試験制度の下の法曹養成制度は、決して「点による」法曹養成制度ではなかったからです。

 例えば、旧司法試験制度の下で司法試験に合格しても2年間の司法修習期間があり、傍観者的立場ではありましたが、裁判官・検察官・弁護士につき、実際の事件、実務に触れた教育を受けていました。また、弁護士になってからも勤務弁護士として通常3年から5年間実際の事件の重圧に耐えながら先輩弁護士(「ボス弁」と言います。)に事件の取組み方や依頼者や相手方・裁判官への接し方等々机上の学習では決して学ぶことのできない事柄を沢山教えてもらい、或いは、怒られたり注意されたりしながら、長年かけて一人前の弁護士に育てられていました。

 これに対し、現在の法曹養成制度は、2年ないし3年の法科大学院教育を受けますが司法試験合格後の司法修習期間は1年に短縮されています。また、弁護士になった後の就職先がないことから、3年から5年といった勤務弁護士を経験することなく、いきなり独立開業する(=「即独」と言います。)或いは、先輩弁護士の事務所の机は借りることができるものの、自分の判断のみでで事件に取り組む(=「ノキ弁」と言います。)ことを余儀なくされる弁護士が年々増えています。

 特に、司法改革以後、司法試験合格者数を急増させたため、司法修習中の教育内容が薄くなっていることが問題となっています。人数があまりにも多く、きめ細かな教育など到底望めません。期間が旧制度よりも半減させられているので、裁判官・検察官・弁護士の仕事をたったの2ヶ月という短期間しか見ることができませんから、事件を最初から最後までを見ることができなくなってしまいました。
 しかし、問題はそれだけではありません。修習生の方も就職活動に忙しく、とても司法修習の中身に集中できません。全国の法律事務所を所狭しと20箇所30箇所と回り就職活動を行なうのは当たり前で、それでも就職先が見つからないのですから、修習に身が入らないのはむしろ当然であるとさえ言えます。

 なのに、法科大学院至上主義の方々は、修習制度の充実を叫ぶどころか、「司法修習など不要。」と言い出す始末です。

 一体全体この新制度のどこが「点からプロセスによる法曹養成制度」なのでしょうか?!

 教育期間からしても、教育内容からしても、旧制度の下の方がよほど「プロセスによる法曹養成制度」だったのですが、司法修習をなくしてしまえば、さらに新制度が「点による法曹養成制度」に益々大きく近づくことになります。
 
 「点からプロセスによる法曹養成制度」というのがいかに羊頭狗肉のスローガンであるかは自明です。

 TPPもそうですが、いい加減誤ったスローガンを掲げるのは、止めて戴きたいものです。
 
 
 

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