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2012.05.27
日弁連の法科大学院に関する意見書には、たびたび「法曹養成の中核たる法科大学院」という文章が出てきます。
しかし、法曹養成の中核は、あくまでも司法修習のはずです。
法科大学院が法曹養成の補完的制度ではあっても、中核であるはずがありません。なぜなら、法科大学院を出た方が皆法曹になるわけではなく、従って、法曹を養成することのみが法科大学院の教育目的とはなり得ないからです。これに対し、司法修習は、近年弁護士としての就職先がないことから致し方なく法曹以外の職業に就かざるを得ないことは多いですが、それまではほとんど全員が法曹になる人達の集まりで、まさに法曹を養成するためのシステムです。
「法科大学院が法曹養成の中核とするのはおかしいのではないか。」との質問を日弁連の法科大学院の委員に求めたことがあります。
日弁連の委員は、法科大学院が法曹養成制度の中核であることの理由として2つを上げました。
1つ目は、過去、司法制度改革審議会の意見書や日弁連の意見書に度々「法科大学院が法曹養成の中核」という言葉が出てくること
2つ目は、「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」いわゆる「連携法」において法科大学院について「法曹の養成のための中核的な教育機関として」と記載されていること
です。
しかし、これらはいずれも理由とはなっていないと思います。
2つ目の連携法にいう「法曹の養成のための中核的な教育機関」という文言から法科大学院が法曹養成の中核であるとの結論は導かれません。
「中核的な教育機関」と「中核である教育機関」とは違うからです。
例えば、「これは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」の絵です。」というのと「これは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」的な絵です。」との対比を考えて頂ければ容易にご理解頂けると思います。
「中核的な教育機関」と敢えて「(中核)的」をつけるということは、裏を返して言えば法科大学院が法曹養成の「中核」ではないことを意味します。
従って、「連携法に上記表現があるから」というのは、巧妙なすり替えがそこにあるのであって、実際には全く理由にはなっていません。
1つ目の過去の意見書に同様の記載があるからというのが理由とならないのは、論を待たないでしょう。
過去に間違いを犯して、それを繰り返すだけの可能性があるからです。
実際、司法制度改革審議会の意見書の中身が全くの的外れであったことは、既に歴史の証明しているところです。
1つ目の理由は、単なる権威付に過ぎない、合理的理由にはならないものです。
「偉い人が言ったから正しい」ということが当てはまらないことは、既にこの12年間の司法改革の失敗が証明していますから。
今となっては「法科大学院先にありき」原理主義が今や司法崩壊の元凶となりつつあるように思います。