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明治学院大学法科大学院の悲哀

2012.06.01

 

 昨日、明治学院大学院法科大学院の関係者の知人が私のところにお詫びの挨拶をしに来られました。
 
 私としては、お詫びをされても困るのですが、その方の気持ちを忖度すれば以下のようなものではないかと思っています。すなわち、その方としては、「これまで司法改革、況や法科大学院制度が破綻するということはわかってはいても、どうにか上手くいくのではないかとの一縷の望みに賭けて法科大学院教育に心血を注いできたが、結局は夢破れ、学生にも申し訳ないが、司法改革に警鐘を鳴らしてきた私たちの活動にも水を差してきたことを申し訳なく思っている。」といった思いだったのではないでしょうか。

 私が「わかって戴いてこっちに来て戴ければ何も言うことはありません。これから一緒に闘いましょう。」と笑って声を掛けたのですが、ひたすら「すいません。」と頭を下げておられました。
 
 明治学院大学の入学者停止の文書を下記添付書類に貼り付けておきますが、学長の「昨今の、社会人、他学部出身者の志願者が激減している状況では、本学の法科大学院はより大きな影響を受けることになるため、入学者の減少は避けられず、近い将来も改善する見込みがありません。それゆえ、今回の法科大学院教授会の決断はやむを得ないことと考えています。むしろ、早めに決断して在学生、修了生に対する教育責任を全うしたいという法科大学院の決定は、勇気ある決断と評価しております。」との言葉から苦渋の選択であったことは容易に想像できます。

 ただし、入学者減少の原因が「社会人、他学部出身者の志願者の激減」というのではトートロジーのようで論になっていません。志願者の激減の一番の理由は、何度も申し上げてきましたが、弁護士の就職難、経営難です。第二の理由は法科大学院制度の経済的・時間的負担の大きさです。
 
 仮に、法科大学院に莫大な時間とお金がかかったとしても、その投下資本が回収できるのであれば、人間誰しも投資しようとするでしょう。社会正義を実現し、人権を擁護するとの弁護士としての職業的魅力は、非常に大きいものがあるからです。誰だって正義の味方になりたいし、「弱きを助け強きをくじく」人になりたいのです。弁護士は、その意味において自己実現を究極に満足できる大変素晴らしい職業です。
 しかし、就職先がなく、独立開業しても赤字経営に苦しむであろうことが目に見え、下手をすれば破産に追い込まれかねないような状況下で、家族を路頭に迷わせる危険を犯してまで、一体全体どこの世界に弁護士を目指す人がいるというのでしょうか。赤字垂れ流しでも一生生活できるほどのお金持ちならいざしらず、それ以外に目指せる人はいないでしょう。

 その上、以前なら司法試験にさえ受かれば、予備校にいかなくても、大学在学中でも法曹資格を取得できましたが、新司法試験制度の下では、大学を卒業して、更に莫大な学費や生活費が必要な法科大学院に2年か3年通い、法科大学院を卒業してからでないと司法試験を受けられない構造になっているのです。更に言えば、司法試験に合格しても1年間の修習期間も国からお金を借りて司法研修を受けなければならなくなったのですから(給費制から貸与制への以降)、法科大学院志願者が激減するのは当然のことなのです。
 
 明治学院大学の学長としては、あからさまな理由が言えない事情があるのでしょう。ただし、「勇気ある決断」との学長のコメントの後半部分には賛同できます。

 昨日、来られた明治学院大学法科大学院関係者の方も「うちよりも酷い法科大学院は山ほどあります。これから次々と法科大学院は潰れていくと思います。早くに入学者募集廃止を決めた明治学院大学をほめてやってください。」と胸を張っておられましたが、これ以上被害者を増やさないための英断は評価すべきだと思います。

添付資料添付資料を見る(PDF: 116 Kbyte)

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