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弁護士の業務拡大は社会を良くする?!

2012.06.07

 

 弁護士会は、弁護士の業務拡大に躍起になっています。
 
 しかし、弁護士の業務拡大は社会を本当に良くするのでしょうか。
 「法律家は、悪しき隣人」という言葉がありますが、どこの世界にも弁護士がいる社会が本当に望ましい社会と言えるのでしょうか。

 法律でトラブルを解決することが必ずしも社会に正義をもたらすわけではありません。
 なぜなら、法律というのは、最低の倫理を規定しているだけだからです。

 「人を傷つけてはいけない。」
 「人のものを盗んではいけない。」
 「約束は守りましょう」
 
 
 一般の社会では、この程度のことは当然に守って行動しているのです。
 すなわち、法律を守ることは当然のこととして、その上で、いかに人間として誠実に対応すべきか、いかに職業人として専門家として対応できるかというところで、皆さん勝負しているのです。

 その意味で、法律に反するかどうかよりも人間としての倫理或いは職業倫理をいかに守るかの方がむしろ重要だとも言えます。
 
 仮に、法律で社会的紛争を解決することが世の中を良くすると仮定してみましょう。

 法律的解決は、弁護士資格を持った人でなければ、できないものでしょうか。
 
 元法律新聞の編集長だった河野真樹氏は、その著書「破綻する法科大学院と弁護士弁護士観察日記PART2」(41頁)で我が国社会をして「法知識が拡散し、法曹ではない「法律家」が多数存在してきた法知識の「拡散型モデル」」と、「法律家は多くても専門家以外に法知識は分布せず、素人とプロの壁がはっきりしている「集中型モデル」の国」であるアメリカ社会と対比しておられます。

 アメリカには、法学部がありません。
 弁護士になりたい人は、4年間大学を卒業した後、2年間のロースクールを出てその大半が弁護士資格を持ちます。大学で法律を学ぶのは、ロースクールでの2年間の勉強ということになります。それで弁護士資格を持ってしまうのです。

 日本では弁護士を目指さない方でも4年間の大学生活で法学を学び法的素養を身につけた多くの人材が社会のありとあらゆる場面で活躍してきました。
 また、我が国には、弁護士以外にも税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士等々法的専門家が細分化して存在してきました。

 他の諸外国では、これら法的職業人が細分化されておらず、「弁護士」が行います。

 日本の弁護士は、フランスとよく比較して「少ない」とされるのですが、フランスの細分化されていない弁護士と日本の弁護士を比べるのは、誤導です。

 当会の市民シンポで大阪の坂野真一弁護士は、「バス・トラック・ファミリーカー・スポーツカー等あらゆる種類の車両全ての台数と日本で言うスポーツカーの台数を比べて日本の車は『少ない』と言っているのと同じで、間違っている。」と講演されましたが、まさにその通りだと思います。
 
 弁護士でなければ、法的解決が行えないなどというのは、弁護士の奢りでしかないでしょう。


  

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