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法科大学院制度の失敗

2012.07.05

 

 産経ニュースがインターネット上で法科大学院についてのアンケートを実施しました(http://sankei.jp.msn.com/life/news/120705/trd12070522130037-n2.htm)。
 ※ご参考までに下記添付資料にも貼り付けておきます。

 このアンケートは、私たちが実施した弁護士のみのアンケートとは異なり、一般の方も含めてのアンケートですので、結果が興味深いところでしたが、「法科大学院は必要か」との質問に「不要」との回答が76%、「必要」との回答が24%で、「新司法試験で合格者の質は向上したか」との質問に対しては、「向上していない」が89%で、「向上した」が11%との回答割合だったそうです。

 この回答結果は全弁護士に対するアンケートよりも法科大学院に対する批判的結論がより濃密に出ています。

 この差異は、自らが法科大学院出身者である弁護士が多数存在すること、平成12年11月1日の臨時総会決議で日弁連が法科大学院制度創設を高らかに宣言する決議を可決し、かつ、弁護士が多数の実務家教員に就任する等弁護士が法科大学院の創設及び運営に深く関わっていること等から弁護士の中に法科大学院制度を肯定したいというインセンティブが強く働くからだと思います。

 その意味では、今回の産経ニュースで行ったアンケート結果において、法科大学院制度が失敗したとの評価が弁護士に対するアンケート結果よりもより厳しい数字で出ているのは、いわば当然のことなのかもしれません。

 よって、先に行った弁護士アンケート結果の評価としては、利害関係のある弁護士のアンケートをもってしても法科大学院制度に対する「反対」が51%、法科大学院修了資格を司法試験受験資格から撤廃すべきとするのが64%にものぼっているとすべきだったのです。

 従って、利害関係のない人達からすれば、お話しにならないほど法科大学院制度が評価されていないとの今回のアンケート結果は、予想された結果だったのかも知れません。

 いずれにしても法科大学院制度の失敗は誰の目からも明白でしょう。

 ところが、産経ニュースの意見の紹介においては「制度は重要」という肯定的意見の方が否定的評価よりも先に記載され、肯定的意見と否定的意見の記載欄が同じ分量で記載されています。

 読み手には数字よりも記載欄の方が印象に残るでしょうから、このニュースを見られた方には、法科大学院に対する肯定的評価が頭に残るでしょう。

 次いで言うと、「新司法試験で合格者の質は向上したか」との質問の仕方及び回答欄も「YES」「NO」との二者択一にしてあるのは、きわめて誘導的で悪質さを感じます。
 「新司法試験で合格者の質は低下したか」との質問設定をすることも可能だったはずだからです。或いは、本来は、回答として「向上した」「変わらない」「低下した」との三者択一にすべきだからです。
 
 このように客観的アンケート結果と相反する特定の方向へ視聴者を誘導する手法を用いるのはきわめて問題があると思います。
 
 マスコミは、法科大学院制度の失敗をそろそろ真正面から認めるべきでしょう。 
 
 

添付資料添付資料を見る(PDF: 207 Kbyte)

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