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2012.07.08
駿河台大学法科大学院も新規の学生の募集停止を決めました。
姫路獨協大学、大宮法科大学院、明治学院大学、神戸学院大学に続き募集停止を決めたのは全国で5校目です。
駿河台大学の学長のコメントには「新司法試験合格者の拡大は当初の構想のようには進まず、更に、法曹の社会の幅広い分野への進出は遅々として拡大せず、更に、法曹資格を得ても、多くの者が法律事務所等に就職できないという事態が生じています。」と「法曹養成制度を巡る社会環境の大幅な変化」が原因であるとしています。
神戸学院大学の研究科長の見解も「当初にあった司法試験合格者3000名はいまや実現される見込みは皆無に等しく」等、あたかも今日の事態が想定外、実現不可能な事態の出現であったかの如く記載されています。
大学側の人間としては、「もともと予想された事態ですが・・・」等とは口が裂けても言えないのでしょう。
しかし、本当は、こうなることはわかっていたはずです。
学者の方々は10年ともたない制度設計を予測できなかった等というほど低脳ではありません。
実際、平成12年当時から、「弁護士が足りない」とか、「一般企業が法曹資格ある人を求めている」などと言った立法事実も統計も一切存在しませんでした。むしろ、当時、司法制度改革審議会が行った市民アンケートからは逆の統計結果しか出なかったのです。
しかも、我々が散々「法曹需要はない」、「法科大学院制度を立ち上げるべきではない」「法科大学院は、早晩潰れる」ということを申しあげてきました。
にもかかわらず、強引に法科大学院制度を「一夜」にして設立していったのです。
大学側がわかっていないはずがありません。
大学側としては、国が法科大学院制度を設けた以上、それに乗らざるを得なかったのです。それ以外に選択肢はなかったと言っても過言ではありません。
大学は、文部科学省に人事権もお金(補助金)も握られているのですから、当然と言えば当然のことです。
法科大学院のない法学部にこの少子化社会で学生が集まるとは思えませんから。
その上、法科大学院に補助金が集中するのは目に見えており、法科大学院のない大学への補助金はその分減らされるであろうことは火を見るより明らかです。
よって、法科大学院など到底制度としてもたないとわかっていたとしても、大学側が法科大学院を作らないという決断をするのは至難の業だったのでしょう。
逆に言えば、大学側にいかに自由がないかということです。
大学の自治が認められている我が国において大学が正論さえ言うことができない、自由に行動することができないというのが、今の我が国の大学制度の最大の問題であると言えましょう。大学の自治など有名無実に等しいのでしょう。
このようにある程度大学側に同情の余地はあるとは言え、「当初からは予想できなかった」という言い訳や他人のせいにするのは、教育者の発言としてはいかにも恥ずかしいと思います。
自分たちが「法科大学院を出れば就職先がある」ことを前提に法科大学院の宣伝を行い、かつ、その法科大学院出身者が路頭に迷っているのですから、組織内弁護士にしてもその他にしても大学側が就職先まで探し出してあげるのが、法科大学院の制度設計及び運営に携わった者のせめてもの責任の取り方ではないでしょうか。
法科大学院を出て司法試験に合格するまでには、莫大な費用と時間がかかるわけですから、学生の就職先がなくても構わないと思っていながら、法科大学院を作ったというのでは、それはそれで、あまりに無責任で、まさかそれを前提には作ってはいないでしょうから。
それは、大学関係者だけでなく、弁護士にしても同じだと思います。
「法曹需要はいくらでもある。」「弁護士を増やしてもいくらでも就職先はある。」「司法改革を進めればバラ色の未来が待っている」等々散々喧伝してきたのですから、これ以上、司法改革を進めるのであれば、自らの言動に責任を持つべきではないでしょうか。
その意味では、「当初は予測できなかった」として法科大学院の学生募集を止めるのは、恥ずかしくはあっても、少しは評価されるべきなのかもしれません。
ただ、念押しをしておきますが、年間司法試験合格者数3000人が実現したとしても法科大学院は潰れていたことは間違いありません。3000人が実現していたとしても就職先がないことに変わりなく、法科大学院志願者が激減することは間違いありませんから。
募集停止をする際の言い訳については、もう少し人間として、教育者として、潔いコメントをされた方がよいと思います。