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2012.07.22
昨日、愛知県弁護士会司法問題対策委員会主催の「法曹養成と法学研究に関する研究会」と題する勉強会が行われ、私も参加させて戴きました。
発表者は、学者の戒能通厚先生と同じく学者の愛敬浩二先生です。
まずは、愛敬先生から「法学研究者養成の危機打開の方策」の付属アンケート等(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t135-5.pdf)の分析と法科大学院制度の改善に関する具体的提言に対する愛知県弁護士会の意見書(http://www.aiben.jp/page/frombars/topics2/617lawschool.html)についての感想等が述べられました。
法学系大学院には、法科大学院とそれ以外のもっぱら研究者養成を目的とする大学院との2種類があります。法科大学院の大学院生の数が減少していることはよく言われますが、法科大学院以外の大学院の院生にも減少傾向が認められます。
また、院生の外国人留学生の占める数は上昇傾向が認められ、例えば、2008年の名古屋大学における博士前期課程の留学生は82.9%にまで上ったこともあったそうです。
その他顕著なのは、国際法系の博士前期課程入学者が75名(2003年)→54名(2008年)→35名(2011年)と激減していることです。
「グローバルな法曹を育てる」ために法科大学院が役立つと言われていましたが、ふたを開けてみれば、国際法を研究する人が激減しており、ここでも理想と現実が見事に乖離していることが統計から客観的に明白になります。
大学の立場から見て、法科大学院の設置以後、大学における研究養成システムが完全に瓦解していることが上記アンケートからありありと読み取れます。
そして、愛敬先生は、「愛知県弁護士会の意見書で『法科大学院を司法試験受験資格から外せば、法科大学院はたちまち崩壊する。理想的な法曹養成教育を行えば、自ずと学生は集まってくるはず』と書かれているが、これは、あまりにも現実離れしている。こういったことを書かれると学者は弁護士会とは共闘できなくなる。法科大学院ができたことは、研究者養成という大学側の観点から見ても大変不幸な結果がもたらされている。法科大学院批判は、大学の側から見たとしても納得できる内容にした方が良いと思う。」と言われていました。
また、「学部の空洞化が激しい」とのことでした。
大学の研究者が研究する暇もなくなっており、研究レベルの低下も深刻な問題となっています。
法科大学院は、法曹養成だけでなく法学研究者養成問題にも深刻な影を落としていることが良くわかります。
ただ、大学の研究にしても司法にしても医療にしても、このような分野において自由競争はそもそも成り立たないものなのです。それを大学側が認めずに弁護士の世界だけ自由競争にすれば司法が良くなるかのごとく言われるのは、ご都合主義と批判したくなる弁護士の気持ちも理解して戴きたいと思っています。
規制緩和・自由競争が金科玉条のごとくもてはやされていますが、自由競争が有効に成り立のには、きわめて限定的な条件の下でのみしかなく、ほとんどの世界で上手く機能しないと思います。