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2012.11.18
11月8日に兵庫県弁護士会で行われた法曹養成に関する会員集会では①「法科大学院をなくしたら、ダブルスクール化の弊害が除去できないのではないか。」②「法科大学院を廃止したら、また、予備校が繁栄してしまうのではないか。」③「法科大学院にはお金がかかると言うが、法科大学院を廃止しても予備校に通うお金がかかるのではないか。」といった質問が出ました。
ざっくりと分けて①「ダブルスクール化の弊害」問題と②「予備校繁栄論」は同じ論点だと思いますので、①②と③に分けて申し上げます。
①法科大学院をなくしたら、ダブルスクール化の弊害が除去できないのではないか。」②「法科大学院を廃止したら、また、予備校が繁栄してしまうのではないか。」とのことですが、法科大学院制度にした結果、結局、多くの法科大学院生が予備校に通っています。
むしろ予備校は、法科大学院受験の際及び司法試験受験の際とで同じ人が2度予備校に通ってもらえるわけですから、法科大学院制度ほど有難いシステムはありません。
法科大学院の教育では、司法試験合格のための受験予備校的な授業をしてはならないとされているため、(法科大学院や学生の資質にもよりますが)法科大学院の授業に出ただけでは必ずしも司法試験に合格できるわけではないため、法科大学院に通っているから受験予備校に通わないで良いとはならないのです。しかも5年で3回しか司法試験を受験できないという受験回数制限があるのですから、合格をより確実にするために受験予備校に通うのはむしろ自然な流れでしょう。
予備校は、法科大学院制度に移行した結果、以前よりも繁栄しているとさえ言えると思います。
従って、受験生が予備校に通わないようにするために法科大学院制度を守るという結論を導くには無理があります。
なお、先日のブログで書いたように、私は、予備校が悪いという価値観に立っているわけではありません。しかし、「予備校が繁栄するのではないか。」と質問をされる方の価値観としては、予備校に通うことが悪いことを前提とした議論をしておられるので、その立場に立って考えた場合の話を申し上げています。
③「法科大学院にはお金がかかると言うが、法科大学院を廃止しても予備校に通うお金がかかるのではないか。」とのことですが、予備校にかけるお金と法科大学院にかけるお金とは額が違います。
福岡の家電弁護士なにわ電気商会のブログ「司法試験予備校の七不思議」(http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-11405697822.html)で面白い比較をされています。
上記ブログでは、予備校で学生の月謝(論文答練まで全部込で)50万円(年間のことだと思います)とあります。
しかし、予備校の場合、必ず年間50万円必要となるわけではありません。予備校の場合は、自分の不得意な科目だけを受講する、あるいは、答案練習会のみを申込むことにより、年間10万円以内で済ませることもできます。実際、答案練習会のみ利用される受験生は多いと思います。ところが、法科大学院の場合、そのように取捨選択をすることにより授業料を「節約」するというわけにはいきません。
学費という面からすれば、予備校と法科大学院とでは比較にならないほど法科大学院の方が負担となるのです。
その上、前述したとおり、法科大学院に通いながら予備校に通う学生も多いので、予備校弊害論の除去を法科大学院制度の正当性の論拠にするのは、理論上無理があると思います。