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2013.09.09
平成25年6月26日に法曹養成制度検討会議取りまとめ(以下、「本取りまとめ」と言います。)が発表されました。
本取りまとめの中身には突っ込みどころが多すぎて、反論を書くと長くなるので、今回は、本取りまとめの構成に限った話をしたいと思います。
取りまとめの構成は、まず、「はじめに」から始まり、「第1 法曹有資格者の活動領域の在り方」「第2 今後の法曹人口の在り方」「第3 法曹養成制度の在り方」「第4 今後の法曹養成制度についての検討体制の在り方」最後に「おわりに」と続きます。
そして、「第3 法曹養成制度の在り方」という章にだけ「1 法曹養成制度の理念と現状 (1)プロセスとしての法曹養成(2)法曹志願者の減少(3)法曹養成課程における経済的支援」「2 法科大学院について (1)教育の質の向上、定員・設置数、認証評価(2)教育の質の向上、法学未修者の教育」「3 司法試験について (1)受験回数制限(2)方式・内容、合格基準、合格者決定(3)予備試験制度」「4 司法修習について(1)法科大学院教育との連携(2)司法修習の内容」「5 継続教育について」という細かい項目立てがされています。
この構成のみからわかることは、以下の通りです。
1) 法曹需要がないことは法曹養成制度検討会議もわかっていること
2) 法曹需要がなくとも、司法試験合格者数を絞るつもりがないこと
3) 法科大学院制度が制度存続の危機に直面していること
4) それでもなお法科大学院制度を前提とした体制を堅持したいこと
です。
1)について
これまでは、法曹需要、すなわち、弁護士に対する需要があると思われていたので、「弁護士」の活動領域という言葉が用いられていました。しかし、「弁護士」の活動領域の拡大など到底見込めないことがもはや誰の目からも明白となってきたことから、本とりまとめでは「弁護士」の活動領域の拡大ではなく、「法曹有資格者」の活動領域の拡大という概念のすり替えが意図的に行われています。「弁護士」というキーワードではもはや法科大学院に学生を呼び込めないのです。
2)について
法曹人口問題が司法行政の根幹を形作るにもかかわらず、本とりまとめは、法曹人口問題を第1章にもってくるのではなく、第1章に枝葉的論点である法曹有資格者の活動領域の在り方の方を冒頭にもってきています。この点から、司法試験合格者数を減らしたくないという強い決意が読み取れます。法科大学院制度を死守するためには、何としてでも「法曹有資格者」の活動領域を拡大しなければならないのです。
実際、今後の法曹養成制度の検討体制においては、法曹有資格者の活動領域のみに特化した有識者会議を設け、各分野別に分科会が設けられるとのことです。この後継組織の在り方からしても、枝葉的論点である法曹有資格者の活動領域拡大が本取りまとめの最重要課題の一つであることがわかります。
ちなみに、9月10日は、司法試験の合格発表ですが、その人数は、現状の2000人からさほど変わらないと私は予想しています。
3)と4)について
旧司法試験制度においてはプロセスとしての法曹養成制度が確保されていました。新司法試験制度の方が司法修習期間は1年と半減し、就職先がなく、オン・ザ・ジョブトレーニングの機会が確保されない等プロセスとしての法曹養成がないがしろにされているのです。にもかかわらず、第3の法曹養成の章では、司法改革を始めた当時のお題目を唱えるだけの誤った刷り込みタイトルが続きます。
そして、2項の法科大学院の部分では、教育の質の向上、定員や認証評価、法学未修者の教育等といった細かい、技術的なタイトルが続きます。
本とりまとめは、法科大学院制度に問題があることを前提としてはいますが、あくまでも法科大学院制度を死守するためにはどうしたらよいかという構成になっているのです。
法曹養成制度検討会議の取りまとめは、このように構成を見ただけでも、実際に存在する弊害やパブリック・コメントを無視した、特定の方向に向けた特定利害関係者の茶番の結果であることは明白であると思います。
このような中にあって正論を言い続け、孤軍奮闘をされてきた和田吉弘委員には本当に頭が下がるばかりです。
和田委員は、裁判官として、大学の研究者として、法科大学院の教授として、そして、弁護士として、実務を、そして、現場を見ておられてきたのです。そして、パブリックコメントの結果からも、和田委員の意見の方が市民や法曹関係者の意見を反映していた正論であることはわかっていたはずです。
和田委員の発言を無視した最終とりまとめには、憤りを覚えるばかりです。