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2013.09.16
法曹養成制度検討会議(以下、「検討会議」と言います。)の取りまとめは、昨日のブログで触れた通り、手続き自体が茶番なのですから、内容に至っては「何をか言わんや」なのですが、まずもってあきれてしまうのは、冒頭の「はじめに」という記載内容の酷さです。
この部分は、平成25年4月9日に公表された法曹養成制度検討会議(以下、「検討会議」と言います。)の「中間的取りまとめ」の記載が大幅に改定された部分です。
改革・改定されると悪くなるのは世の常ですが、検討会議の取りまとめの悪化具合は本当に目を当てることができないくらいです。
検討会議の取りまとめの冒頭部分「はじめに」は、司法制度改革審議会(以下「審議会」と言います。)の意見書を真似て記載されています。
しかし、もともと審議会意見書の文章自体が日本語になっておらず、いかにも人を感動させんかなといったあざとい文章ばかりが連なっていたのです。検討会議は、その司法制度改革審議会の悪文を劣化コピーして記載してあるのですから、どのような日本語になるのかは、火を見るより明らかです。
また、審議会意見書の悪名高い文章力はおくとして、実際審議会の意見書に沿った内容の司法改革が行われ、その結果、司法制度が崩壊させられたのは、皆さんご承知の通りです。
私たちが叫び続けたこと以上に司法制度崩壊という事実の証明により、審議会の意見書の化けの皮は完全に剥がれています。
にもかかわらず、検討会議は、12年を経て、完全に色あせた審議会の意見書の文章を恥ずかしげもなく引用するのですから、あきれて物が言えません。
また、「はじめに」の記載部分の次に検討会議の取りまとめで悪質なのは、法曹人口問題の部分です。
法曹養成制度検討会議の取りまとめの第2章「今後の法曹人口の在り方」は、「社会がより多様化、複雑化する中、法曹に対する需要は今後も増加していく」「このような社会の要請に応えるべく、質・量ともに豊かな法曹を要請する」という文章から始まります。
この部分に対する反論の論証、すなわち、法曹に対する需要は増加しないことは、「司法崩壊の危機」(花伝社)(http://kadensha.net/books/2013/201306shihouhoukainokiki.html)という本の中に記載していますので、詳細はそちらに譲らせて戴きます。
法曹人口の在り方で一番酷い記載部分は「当面、このような数値目標を立てることはせず、」「新たな検討体制の下」「法曹人口についての必要な調査を行うとともに、その結果を2年以内に公表するべきである」との部分です。
偉い大学の教授先生方が集まって一体全体何をしておられたのか不思議でなりません。
というのも、これまでに法務省、文科省、総務省、日弁連を始めとして様々な機関が必要な調査をほぼ全て実施しつくした感があるからです。インターネット上で検索すれば、ありとあらゆる資料が入手できます。
上記機関から様々な統計結果が出た上で「年間司法試験合格者数1000人でも多すぎる」との結論が既に出ているのです。
これら資料や統計結果の存在を検討会議の中心的委員や法務省の官僚が知らないはずがありません。
検討会議の座長が法務省からパブリックコメントの結果について説明を受けていなかったなどといったはずがないのです。
旧司法試験制度は、多少の金属疲労が生じていたかもしれませんが、60年は維持されていました。
ところが、新司法試験制度は、12年・13年程度で既に崩壊しています。
法科大学院志願者数が激減の一途を辿っており、法科大学院はもはやチキンレースの様相を呈していますし、弁護士激増の結果、オンザジョブトレーニングの欠如や横領事案の急増等新人弁護士のみならず中堅以上の弁護士の質の低下も顕著です。
法曹人口問題は、司法制度の構造そのものを変容させる最も重要な問題です。
それなのに、検討会議の取りまとめは、法曹人口問題を第2章に記載し、しかも、これまでの調査結果及び現実を無視し、これから調査を行い、2年間もの長期に亘り検討するかの如く記載しています。
繰り返しますが、司法制度は、弁護士激増により既に完全に破綻しているのです。従って、2年間2000人を続ければ、もはや取り返しはつかなくなります。法曹志願者が激減している中にあって、現状の2000人路線は、かつての3000人路線と同じほどの破壊力を発揮するでしょう。
パブリックコメントの募集の仕方、パブリックコメントの結果に敢えて蓋をして全く逆の結論を導くという手続的問題に象徴されている通り、検討会議の取りまとめは、その内容においても極めて悪質であると思います。