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法曹志願者からの連絡

2013.09.17

 

 9月8日に「法曹志願者からの相談」という題名のブログを書きました(https://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20130908224941)が、その青年からメールを頂戴しました。
 ご本人の承諾を得て下記に引用させて戴きます。
 私には概ね正論であるように見えますが、皆さんは下記ご意見をどのように感じられるでしょうか。  
                       記
(引用はじめ)
「武本夕香子先生

 名刺からアドレスを頂戴して、メールを差し上げました。(中略)

  私のことをブログで取り上げてくださったことに感謝致します。そのような声が実際にあることを、これからも発信してくだされば幸いに思います。

 お話を伺ってからも色々考えているのですが、やはり合理的経済人ならば法科大学院へは行かないのだろうなと思います。少し前に出版された『誰が法曹業界をダメにしたのか-もう一度、司法改革を考える』(中公新書ラクレ、岡田和樹・斉藤浩共著)という本を読んだのですが、呆れて物も言えませんでした。

 ここからが私の考えなのですが、法科大学院における借金問題があまり取り沙汰されないのは、法科大学院に限らず、大学院一般において借金問題があることだと思います。また、今やほぼ例外なくどんな企業も安泰ではありません。大企業でさえ中高年のリストラを進めている状況です。だから、弁護士も安泰でいるのはおかしい。就職難なんて甘えだという意識は当然あろうかと思います。この弁護士淘汰は難しい問題だと思います。競争は本来あるべきなのでしょうが、弁護士業界はその性質上市場原理が適切に作用しない業界ですから。明らかに弁護活動全般に支障が出るといった事情が生じ、一般国民からの信頼がなくなるという事態にまで陥らなければ、改善されない問題かもしれません。

 改めて、司法制度改革の罪は重いなあと思います。少なくとも、法科大学院「制度」は破綻していると思います。優秀な人材が来なくなることもあるかと思いますが、最大の罪は入口段階で萎縮効果を与えていることだと思います。私は、弁護士も一つの職業にすぎず、安泰でなくて当然だという議論は成り立つと考えています。資格取得は収入保証を意味しませんしね。しかし、一つの職業に過ぎない割には、そこにたどり着くまでにかかるハードルが高すぎると思うのです。法科大学院問題も、貸与制も、就職難も、すべてはここに帰着するのではないかと個人的に思っております。それを、甘えだという人もいるかと思いますが、「甘え」と言っている本人自身が甘えているのではないかと思うのです。

 私は幸いにして、両親からたくさんの教育投資を受けてきました。すごく恵まれましたし、本当に感謝しています。でも、この教育投資とは難関資格を取ることを意味するのではないと感じています。仕事の有無は市場のニーズで決まる以上、資格の難易度は仕事の有無と無関係なのだと思います。ついつい難関大学を出たので、難関資格を取りたい、取るべきだと思いがちです(私はつい最近までそう思っていました)。しかし、これは違う。市場が必要とする力をつけるための教育投資を意味するのだと理解しています。

 私は弁護士になるのを完全にやめたわけではありません。国家公務員(キャリア官僚)試験にも合格していますし、自分の出来る範囲で、一歩ずつ進めればいいのかなと思っています。

 武本先生が今後も適正な司法改革を発信してくださることを願っています。その際、このような若者の意見を参考として頂けたのならこれほど嬉しいことはありません。

  また、改めて、貴重なお話を伺えたこと、また、私のことをブログに取り上げてくださったことに御礼申し上げます。」(引用終わり)

 

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