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司法制度改革は本当に不要なのか?!

2013.12.01

 

 2013年11月29日付の日経ビジネスに「司法制度改革は本当に不要なのか。」(磯山友幸著)と題する文章が掲載され、そのあまりの内容の酷さがインターネットで話題になっています。

 私も拝見しましたが、この記事の内容は、いかにも陳腐で言い古された内容で突っ込みどころ満載です。この記事に対する批判は、本当にどこから手を付けたら良いか、一つ一つ批判していたら、全くキリがないのですが、一部を以下に抜粋させて戴きます。
 

(引用はじめ)
 「新堂(幸司)氏が語った演題は「忘れ去られた法曹一元制度」。なぜ弁護士の人数を増やさなければいけないのか、弁護士自身が原点に立ち返って考えよ、と訴えたかったのだろう。82歳と高齢の新堂氏が講演を引き受けるのは珍しいのだという。」
(引用終わり)

 私も以前に書かせて戴きましたが、今回の司法改革、特に弁護士人口の急増は、法曹一元をむしろ遠ざけました。

 それは、常識的な考えができる方なら、だれでもわかる道理です。
 
 最高裁判所は、若くて成績優秀な人からしか裁判官を採用しません。
 司法改革以前の年間司法試験合格者数500名の時代であればこそ、弁護士から裁判官に就職できる可能性がありました。実際、当時は、弁護士を希望する人の方が多く、裁判官希望者の売り手市場だったのです。

 しかし、2000人以上も司法試験に合格し、弁護士になっても将来がない今となっては、裁判官や検察官を希望する人が多く、圧倒的な買い手市場です。そのため、裁判官になれるのは、若くして司法試験に合格し、司法試験の成績が100番前後までのほんの一握りの人たちだけで、それ以外の人たちは、裁判官を希望することなど夢のまた夢となっています。
 他方で裁判官になった人たちは、超エリート意識を持つ傾向が強いのだそうです。

 弁護士任官者が少ないのも、「弁護士が裁判官になることを希望しても最高裁判所に断られるケースが頻発し、裁判官になることを希望しても恥をかくだけだから誰も希望しなくなった」との話を聞きます。こちらも買い手市場となっているからです。
 実際には弁護士から裁判官になる人は少ないですが、潜在的な弁護士任官希望者の数は非常に多いのだそうです。

 また、先日のブログにも書きましたが、弁護士が急増することにより、弁護士の精神的・経済的な余裕がなくなり、委員会活動等公益活動は衰退しています。弁護士が意見を表明したり行動する元気は急激になくなってきています。他方で弁護士の不祥事は頻発し、弁護士自治は風前の灯です。
 
 日経ビジネスの上記記事では、弁護士が増えて弁護士の力が増し、法曹一元に近づくかのごとき書き方がなされていますが、実際には、弁護士数の急増に反比例して弁護士の力は急激に衰退しているのです。

 そのため、法曹一元など以前よりもはるかかなたに遠ざかってしまい、法曹一元は益々実現不可能となってしまいました。
 

 今回の司法改革で法曹一元が益々実現不可能になることは、この10年あまりに亘る歴史的事実により既に実証済みですが、実際の歴史的事実を待たずとも普通に考えれば誰でもわかる、「1+1=2」程度の当たり前の道理です。 
 

 この記者が本当にわからないで書いておられるのか、わかっているのに悪意で捻じ曲げた記事を書いておられるのかは不明ですが、「82歳と高齢の新堂氏が講演を引き受けるのは珍しい」などといかにももったいぶった書き方で権威を振りかざすところを見れば、どちらかは明白であると言えるのかもしれません。

 制度改善のための司法改革は必要だったとしても、今回のような「司法改悪」は本当に不要でした。
 
 それがこの記事の表題の問いに対する答えです。

 

 

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