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和田吉弘弁護士と佐藤留美氏の講演(その1)

2014.11.02

 

 10月24日、兵庫県議会が「法曹人口政策の早期見直し及び法曹養成制度の抜本的意直しを求める意見書」が可決された当日の夕方、当会において法曹養成制度顧問会議の元委員で「緊急提言 法曹養成制度の問題点と解決策―私の意見」の著者である和田吉弘弁護士と「資格を取ると貧乏になります。」の著者である佐藤留美氏をお招きして会内学習会を開きました。

 お二人の著書は鋭い視点から的確な指摘が多数なされています。そこで、お二人のお話を是非とも当会の会員にも聞いていただきたくて、お二人には無理をお願いして来て戴きました。

 当会の学習会の中で、和田弁護士のお話で私にとって一番印象に残っているのは、「現在の法曹養成制度は養成される側の立場を向いていない。」「特に、法科大学院がその傾向が顕著である。」ということでした。
 法曹志願者、特に法科大学院志願者が激減していることからも和田弁護士の上記発言が正しいことは証明されていると思います。
 和田弁護士は、法科大学院で教鞭を執られ、実体験に基づいたお話をされているわけですから、我々の発言とは重みが違います。
 

 そして、和田弁護士のご発言には「司法制度改革審議会の意見書には、『法曹需要が世の中にあふれているのに、それに対応するだけの弁護士が存在しないから、弁護士人口を増やさなければならない。』ということで、司法制度改革が始まった。なのに、今となっては、「法曹需要の掘り起こしの努力が弁護士に足りない。」などといった議論のすり替えが行われている。」
 和田弁護士の発言には「このような議論のすり替えは、法科大学院の既得権益擁護のために司法改革が始まり、そして、今も法科大学院関係者の既得権益擁護のための議論であるからなのだ」といった要旨が含まれていたと思います。

 和田弁護士のお話は、いずれも精緻な理論で筋が通っており、伺っていて本当に胸のすく思いが致しました。

 和田弁護士が指摘された法科大学院関係者の既得権益擁護のためであるというのは、最も顕著で象徴的な起源の一つであると思いますが、いずれにしても司法改革が始まった要因が司法制度をよりよくする意図でなかったことは明らかだと思います。
 なぜなら、これほどまでに司法改悪の弊害が顕著になっても司法改革を進めてきた人たちは反省することはなく、誤りを認めて是正することをしないのですから。

 司法制度をより良くするための司法改革を唱えている人であれば、とうの昔に司法改革是正の方向に1890度進路変更をしているはずです。
 弥縫策の小手先だけの修正は、是正とは認められません。より悪い方向に向かうだけです。

 既得権益のための議論だけなら同情の余地はありますが、許し難いのは、自分の既得権益擁護のための議論を偽善で塗り固め、しかも国民や法曹志願者・若手法曹の苦しみを等閑視できるところです。

 司法制度の問題は、すなわち、国民の人権問題に直結する問題なのです。

 司法改悪に鈍感な人は人権感覚も希薄であると思わざるを得ません。

 今回の和田弁護士のお話を伺い、あらためて司法改悪是正への思いを強くした次第です。

 ※佐藤氏のお話と感想は、別の日につづります。  

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