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2014.11.03
佐藤留美氏の講演はかなり衝撃的でした。
佐藤氏は弁護士への取材をかなり行っているようで、弁護士業務が大きく変容している様を報告されました。
佐藤氏のお話によると、最近の弁護士はマーケティング調査を行い、弁護士業務の徹底したビジネス化が行われていること、極端な分業化で仕事を効率化し、本来弁護士が行うべき仕事さえも弁護士がしないようになっていること、同業者からチャージ料を様々な形で採ること、講師業に特化する弁護士、クラウド化(サイトの中で紹介等して課金=弁護士サービスの流通化)、インハウス、他士業との連携強化、グローバル化、ベンチャー企業法務をターゲットにした宣伝等々弁護士が様々に変化しているとのことでした。
企業内弁護士は、出入りが激しく、「もう雇いたくない」といっている企業も多いそうです。他方、弁護士を多く雇う企業や法律事務所は、訴訟案件を多く抱え、労働条件も非常に厳しいところが多いようで、このようなところに就職してもあまり長続きはしていないようです。
佐藤氏はこれらの弁護士を称して「『進化』する弁護士」といった題をつけておられましたが、私には、佐藤氏が皮肉を込めて「進化」と使っておられるように聞こえました。
最近はよく「弁護士も法廷弁護士だけが業態じゃない。裁判にばかりしがみついているから駄目なんだ。」といった言葉を耳にします。
私は、その言葉を聞く度に、「ホントにこの人たちはピントがずれているな。」と首をかしげてしまいます。
我々は、別に裁判業務にしがみつきたいわけではありません。
実際、私は、年が明けて以降現在に至るまで、一日のうち大半のエネルギーを会務につぎ込んでおり、裁判所に弁護士本来の業務で行くことはほとんどありません。
我々が問題にしているのは、弁護士の業務が世間のイメージと異なることが、世の中の幸せに繋がるのか否かなのです。
これまで国民は、弁護士に頼んだら裁判や法律の専門家としてお願いできる職業の人たちと理解してきました。今もそうでしょう。
医師免許を持っている人に治療を頼んだら、ちゃんとした処方箋を書いてくれ、手術もできるものと信頼しているでしょう。ところが、実際にかかった医師が医師としての実地訓練も十分しておらず、長年講師業等で生計を立てて、手術もしたことのない医師であったらどうでしょうか。国民は、ちゃんとした実地訓練を積んだ医師か、手術をしたことのある医師かどうかどうやって見抜くことができるのでしょうか。
医師の場合には、個人が年間何回も罹り、口コミで医師の情報が広がることもありますが、弁護士には一生で一度かかるかどうかなのです。また、口コミで広げるにもプライバシーを詮索されるので弁護士の情報は本質的に広がりにくいのです。
(※尚、近年、弁護士のランキングや口コミ情報を食べログのように点数をつける試みが始まっていますが、拝見していると、これらのランキングや点数は実際の実力とはかけ離れていることも多いように見えます。)
弁護士の側であれば、法科大学院卒業までにできた奨学金(借金)を返済し、家族を養うためなら、裁判業務をあっさりと捨て去ることはさほど難しいことではありません。事実、司法試験に合格し、修習まで受け、その後、裁判業務に全く携わらない企業法務や公務員に続々と就職しているではないですか。
佐藤氏の話を伺っていると、弁護士激増により弁護士の業務は極めて多様化していますが、それにより市民も、雇われる弁護士も、そして、当の本人弁護士も誰も幸せになっていません。
「弁護士も法廷弁護士だけが業態じゃない。裁判にばかりしがみついているから駄目なんだ。」と我々を非難する人たちは、結局、我々を変化に対応できない保守的で駄目な弁護士であるとのレッテル張りを行い、我々の人格非難をしているだけです。
そして、何故そのような人格非難をするかというと、我々からの主張にまともに理論的反論ができないからであると思います。
可哀想で残念な方が多過ぎるように思います。